恋の後味はとびきり甘く
「わあ、すごくキレイ」

 水族館は魚を見るところだと思っていたから、こんなステキなイルミネーションまで楽しめるとはうれしい驚きだ。

 涼介くんが目を細めて言う。

「出るときには外は真っ暗になっているから、きっともっとキレイですよ」
「そうですよね。楽しみ~」

 自動ドアから建物の中に入り、入館チケットを買うために券売機に並んだ。ショルダーバッグから財布を出そうとしたら、涼介くんに言葉で止められた。

「誘ったのは俺なんで、俺に払わせてください」
「あ、でも、私の方が年上だから私が出しますよ」

 私の言葉に、涼介くんがムッと眉を寄せた。

「俺を頼りない年下みたいに扱わないでください」

 そう言ったかと思うと、彼は券売機にさっとお札を入れて「大人二枚」のボタンを押した。出てきたチケットを取って、「行きますよ」とだけ言ってエスカレーターの方へ歩き出してしまう。

「あ、待って」
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