恋の後味はとびきり甘く
 あわてて追いかけたが、前を行く涼介くんの背中が怒っているように見えた。

 私、なにか気に触るようなことを言ったかな……?

 涼介くんはバイト生活だし、私の方が年上で働いてるから、私が払って当然だと思ってたけど……断り方が直接的すぎた? もっと彼の顔を立てるような言い方をしなくちゃいけなかったよね。

 ああ、どうしよう。せっかく楽しい雰囲気だったのに……。

 エスカレーターを降りて入口であるトンネルに着いても、涼介くんは私の数歩先を歩いていた。

 せっかくふたりでいるのに、このままなんて嫌だ。

 私はゴクリと喉を鳴らし、涼介くんの背中に話しかけた。

「あの、涼介くん、私の言い方が悪かったですよね。ごめんなさい。私、涼介くんの負担にならないようにって思っただけで……涼介くんのことを頼りなくなんて思ってないし、年下扱いしたわけでもなくて……自分のことを年上扱いしただけっていうか……」

 涼介くんがピタリと足を止めた。

「その年上とか年下とかやめてください」
「ご、ごめんなさい」
「なんで謝るんですかっ」
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