恋の後味はとびきり甘く
 彼がくるりと振り向いた。その顔はやっぱり怒っている。

「だって……涼介くんが怒ってるから」

 涼介くんが大きく息を吐いて、右手で前髪を掻き上げた。

「すみません。鈴音さんは俺に付き合ってくれてるのに、腹を立てるなんてどうかしてますよね。迷惑だったのなら、そう言ってくれてかまわなかったのに」
「迷惑なんてとんでもない! 私、すごくうれしくて、勝手にデートだって思って舞い上がって」

 あわてたせいで本音を口走ってしまい、カーッと頬が熱くなった。なんてことを言ってしまったんだろう。

 さっきからやることがなにもかも裏目に出ている気がする。がっくりと肩を落としたとき、彼の表情がやわらかくなった。

「俺もそのつもりだったんですよ」
「そのつもりって?」
「デートのつもりで誘ってました」
「ええっ」

 信じられない思いで彼の顔をまじまじと見ていたら、涼介くんが一歩私に近づいた。
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