恋の後味はとびきり甘く
「わあ……」

 トンネルを抜けたとたん、目の前に幻想的な青い世界が広がった。大型水槽が深い青色でライトアップされていて、夜の海の底にでも来たみたいだ。

 巨大な水槽の中を、マンタがゆったりと泳ぎ、巨大なジンベエザメが目の前を横切っていく。小さな魚の群れも一糸乱れぬ動きで泳いでいる。

「あれ、意外とみんな泳いでるんですね。夜だからってまったく泳がないわけじゃないんだ……」
「でも、あっちのアシカは寝てますよ」

 涼介くんに言われて彼の指差す方を見ると、カリフォルニアアシカの水槽では、アシカが陸の上にごろんと横になっていた。ひれを投げ出し、目を閉じて気持ちよさそうに眠っている。

「うわあ、人間みたい」

 私の感想に涼介くんが笑った。

「たしかにああやって寝てる人、いそうですよね」
「あ、見て見て! あっちにラッコがいる!」
「ラッコはまんまだ」

 昼間と同じように浮いたままのラッコを見て涼介くんが笑った。

「ホント、昼間と変わんない」
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