恋の後味はとびきり甘く
 そんなことを考えてぼんやりしていたら、涼介くんに声をかけられた。

「鈴音さんはなににしますか?」
「あ、えっと」

 涼介くんがメニューに視線を落とし、私もつられてメニューを見たが、料理がたくさんあって迷ってしまう。デートなんだから食べたいものを食べたらいいのかな、とも思うけど、私がおごるって言ったら、また怒られそうだし。

 私が迷っているのに気づいて、涼介くんが顔を上げた。

「この“おふたりさま限定ペアコース”はどうですか? 今日のメインはチキンのソテー・バルサミコソースだそうです」

 涼介くんが指差すところを見た。グラスワインに前菜、パスタ、メインにデザートもついていてリーズナブルだ。

「それにしましょうか」

 涼介くんがオーダーしてくれ、しばらくして赤のグラスワインが運ばれてきた。

「今日はありがとうございました」
「こちらこそ誘ってくれてうれしかったです」

 ふたりでグラスを掲げて乾杯をした。こういうお洒落なレストランに来るのは、会社を辞めてからは初めてだ。久しぶりに口にした赤ワインは、酸味の少ないミディアムボディで飲みやすい。
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