恋の後味はとびきり甘く
「モン・トレゾーで売れるくらいおいしいですか?」

 彼に強い口調で問われて、私は口をつぐんだ。

「正直な感想を聞かせてください」
「しょ、正直なって……」
「俺が『モン・トレゾーで売ってくれますか?』って訊いたら、鈴音さん、困った顔をしましたよね。ってことは、そこまでおいしいってことじゃないんだ。ですよね?」

 彼に言われて、私はおずおずとうなずいた。

 涼介くんが大きなため息をついて、椅子の背にもたれた。

「やっぱりなーっ。先生にも言われたんですよね。『これはプロに教わって作りましたってレベルだ』って」
「で、でも、みんな同じトリュフを作ったんでしょ?」
「基本はね。でも、なにか、こう、抜きんでたものがほしいというか……」

 涼介くんが言って、イライラしたように片手で前髪を掻き上げた。私はテーブルの上で両手を組んで彼を見る。

「まだ一年目なんだから、そんなに焦らなくても……。ほかのみんなも同じ気持ちだと思いますよ」
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