恋の後味はとびきり甘く
「どうしたの?」

 私が深いため息をついたのに気づいて、咲恵さんが言い、私はあわてて首を振った。

「なんでもありません」
「そう? 疲れてるのかな?」
「大丈夫です」

 無理しないでね、と咲恵さんが心配そうな顔をするので、私は笑顔を作った。

「チョコレートと紅茶のコラボの件ですけど、私は具体的になにをすればいいですか?」
「ああ、それね」

 咲恵さんが紅茶専門店オーナーの顔に戻って続ける。

「鈴音さんは売りたいチョコレートを五つくらいピックアップしてくれる?」
「はい」
「私がそれぞれに合いそうな紅茶をいくつか選ぶから、最終的にどれと一緒に売るかを一緒に決めましょう。ラッピングとかもそのときに考えましょ」
「わかりました」
「時間のあるときでいいからね」

 咲恵さんは私を気遣うように言ってから、モン・トレゾーを出ていった。残ったのは私ひとり。店が急に静かになった気がする。
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