恋の後味はとびきり甘く
 ほら、お客様が来てくださったじゃない。鈴音、しっかり仕事をしなさい。

 私は自分を叱咤して笑顔を作り、「いらっしゃいませ」と明るく声をかけた。


***


「ありがとうございました」

 閉店間際、ふたりの女性客を見送った後、疲れを吐き出すようにふうっと息を吐いた。

 涼介くんはまだバイト中なんだろうな。まだユキさんは涼介くんのバイト先にいるのかな。

 油断すると、ついそのことが頭をよぎる。

 ダメだなぁ。咲恵さんとコラボするチョコレートを選ばないといけないのに。

「どれがいいかなぁ……」

 気持ちを紛らわせようとわざと声に出して売り場に出た。ショーケースに並んだ、宝石のようにキレイなチョコレートを眺めながら考える。

 ドライフルーツを使ったチョコレートなら、紅茶と相性よさそうだよね。でも、やっぱりうちの一押しのトリュフは外せない。
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