恋の後味はとびきり甘く
「この壁の写真ってどこの街なんですか?」

 足を止めて振り返ったら、私が廊下にかけている小さな額縁のひとつを涼介くんが見ていた。

「あ、それね、ブリュッセルのグランプラスって広場の写真。背の高いギルドハウスがたくさん並んでいて、本当にキレイでしょ?」
「はい」
「周辺にはチョコレートショップもたくさんあったんです。また行きたいなぁ」
「ほかの写真もベルギーのですか?」
「そう。こっちのはブルージュね。この角の小さな店がショコラトリー」

 私は隣の写真を指差した。

「もしかして、最初に俺にくれたトリュフの店ですか?」
「そう!」
「ステキな店構えですね。よく撮れてます」
「ありがとう」

 涼介くんが写真を眺めているので、私は先にキッチンへ向かった。オーブンを開けると、中のグラタンはチーズがいい具合に溶けていて、おいしそうに焼き上がっている。

 うん、好きな人に出しても恥ずかしくない出来だ。

 内心ホッとしながらテーブルにコルクマットを敷いて、その上にグラタン皿を置いた。
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