恋の後味はとびきり甘く
「荷物はその辺のソファの上にでも置いといてくださいね」
「ありがとうございます」

 涼介くんが背中のリュックを下ろしてふたりがけのソファに置いた。カーキのジャケットを脱ぎ、折りたたんでリュックの上に置こうとする。

「あ、ジャケットはコート掛けに……」

 言いながら手を伸ばしてジャケットを取ろうとしたとき、ジャケットを持っていた涼介くんの手に触れてしまった。

「あ、ごめんなさい」

 驚いて反射的に手を引っ込めてしまった。そんな挙動不審な自分が恥ずかしくて、彼と目を合わせないままジャケットを受け取り、リビングの隅のコート掛けに掛けた。

「どうぞ座ってください」

 野菜サラダとドレッシングを冷蔵庫から出してテーブルに置き、涼介くんを椅子へ促した。

「ありがとうございます」

 涼介くんが椅子に座ってから、私も向かい合う席に腰を下ろした。

「すごくおいしそうですね。いただきます」

 涼介くんが言って、フォークを手に取った。私は彼がフォークで刺したマカロニを口に入れるのをじっと見守る。
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