恋の後味はとびきり甘く
「涼介くんは洋食屋さんでバイトしてるんですよね。バイトは毎日?」
「シフト制なんで、曜日が決まってるわけじゃないんです」
「そうなんですね」

 私もグラタンを食べ始めた。今度は涼介くんが質問をする。

「モン・トレゾーの休みは水曜日だけなんですか?」
「はい。やっぱり土日の方が人通りが多いですから」
「やっぱりそうなりますよね」

 そんなふうに他愛のないことをしゃべりながら食事を終えたとき、涼介くんが思い出したように言った。

「そうだ、今日実習でマカロンを作ったんですよ」
「マカロン?」
「はい、ショコラの。鈴音さんにお土産です」

 涼介くんが立ち上がって、ソファの上のリュックを開け、透明の小袋を取り出した。

「ココアパウダー入りのマカロンに、チョコレートクリームをサンドしました」

 涼介くんが差し出してくれたのは、金色のワイヤーリボンで閉じられた小袋で、ココア色のマカロンが五つ入っている。

「わあ、ありがとうございます。せっかくだからコーヒーを淹れますね」

 私は小袋を受け取ってテーブルに置き、コーヒーメーカーをセットした。涼介くんが食器をキッチンに運ぶのを手伝ってくれた。それを洗っているうちにコーヒーが落ちて、ダイニングに芳ばしい香りが漂い始める。
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