恋の後味はとびきり甘く
「あ、もし見たい番組とかあったら、遠慮なくテレビをつけてね。リモコンはテレビ台の上にありますから」
「ありがとうございます」

 涼介くんがふたりがけのソファに座って、リモコンを操作した。ちょうど天気予報が映る。私は男性気象予報士の声を聞きながら、コーヒーカップとスティックシュガー、ミルクピッチャーをトレイにのせて、マカロンと一緒にローテーブルへ運んだ。

「明日もいい天気みたいですね」
「そうですね。鈴音さん、この後のニュースも見ますか?」
「んー……せっかく涼介くんが作ってくれたマカロン、味わって食べたいから消しましょうか」

 部屋が静かになると緊張してしまいそうだけど、食事のときはテレビをつけない、というのが母の教えだった。

「ここどうぞ」

 涼介くんがテレビを消して場所をつめてくれたので、私は涼介くんの隣りにそっと腰を下ろした。手を置けるくらいの距離は空いているけれど、すぐ近くに涼介くんの存在を感じてしまって、なんだか落ち着かない。緊張しているのを悟られまいと、私はことさら明るい声を出した。

「涼介くんが作ってくれたマカロン、さっそくいただきま~す」
< 98 / 166 >

この作品をシェア

pagetop