さよなら、涙。─ また君に会いたくて
「しかも、村井くんから美春に告白したんだよね」
教室の後ろに視線を移しながら、1ヶ月前の出来事を語る千紗は、その時の目撃者でもある。
「あの時は、超びっくりしたよ」
黒い瞳を好奇心いっぱいに輝かせ、あの日の光景を思い出している千紗。
だけど、本当に驚いたのは、私の方だった。
あれは、入学して1ヵ月が過ぎた頃────
『あのさ、結城(ゆうき)って彼氏とかいんの?』
『えっ』
『いないなら、俺と付き合わない?』
春の陽射し暖かい放課後。
教室へ残っていた私の元へ歩み寄った亮介が、かけた言葉がそれ。
同じクラスだとはいえ、一度も話したことさえなかった亮介の言葉に、その時一緒にいた千紗は、大騒ぎだった。