2月14日
0214
去年のバレンタインは、確か土曜日だった。
金曜日学校が終わって、帰って急いでチョコレートを作った覚えがある。
その時私は、他校の私立に通ってたひとつ年上の先輩が好きだった。
その人は背が高くて、2年生の証である赤いネクタイをゆるく結んでいて、おそらくバスケと思われる部活のバッグを肩からかけて、いつも眠そうに電車のドアに寄り掛かりながら立っていた。
友達が乗り込んでくると途端に眠そうに細められた目がぱちりと開き、その後すぐに少し意地悪そうにまた目が細くなる。
いつも同じ電車、同じ車両。
私は家から学校まで少し遠いから、早めの6時発の電車に乗らなきゃいけなくて。
たぶんその人は部活の朝練でこんなに早いんだろうな、なんて思いながら、視界の片隅で彼を見ていた。
眠そうな顔、意地悪そうに上がった口角。
そんなふたつの表情しか見せない先輩。
電車が激混みする前の僅か10分程度の時間、名前も知らないその先輩を見るのが、日課だった。
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