2月14日
そんな彼を好きになったのは、入学してから2か月くらいの時。
きっかけは、単純だった。
その日はテスト期間だったことも重なったのか、いつもは座れる時間帯でも空いている席はひとつも見当たらなくて、私は入学以来初めて立って電車に乗っていた。
あの先輩が乗り込んでくる駅は、まだふたつ先。
いつも先輩が立っているドアの向かい側に立って、だんだんと混みつつある電車に溜め息を吐いた。
本当のラッシュを知っている人からしたらこんなの全然余裕でへっちゃらだろうけど、いつも座っていた私からすれば、それはとってもつらいもの。
おまけに学校まで距離があるし、立っているだけで一日がんばるための体力がごりごり削れていく。
こうなるって知っていたら一本早い電車に乗ったのに……なんて、今さら思っても仕方のないことを思いながら、いつもドアを背にして立っている先輩のマネをして、私もその時は同じようにして立っていた。