王子の初恋は私な訳ない
「いつも、俺の事追い越して早歩きて行っちゃうんだよ。」
そう言う王子の言葉にハッとした。
そういえば通学路にいつも王子がいた気がする。
周りが見えてないから気付かなかった。
「やっと、隣歩けた。」
そう言う彼は今日1番の笑顔をみせてくれた。
その笑顔が私に向いている事に疑問が沸いた。
すると王子は立ち止まって左側を指さした。
「ここ、俺の家。」
「えっ、近っ!」
そこは自宅から徒歩5分の距離だった。
そしていつも通る道だった。
「こんなに近いのになんで気付かなかったんだろ・・・」
そう思うとへこんだ。
「俺が家出るの遅いからかな。」
そう言って笑う彼はまだ寝癖があった。
可愛い。
「・・・寄ってく?」
そう言って手を離さない王子。
これは二度とない人生最大のチャンスではないか。
ただここで踏み入れても良いのか。
いやでも折角のお誘いを断るなんておこがましいことが出来るわけない。
色々考えて答えが出なくて、困って王子の顔をみた。
相変わらず綺麗な顔をしていた。
握った手は離れ、私は王子に抱きしめられていた。
あー、もうこれは行くしかない。
頭がバグって頷いてしまった。