王子の初恋は私な訳ない

私はみんなの会話を聞きながら鞄を置き
外を眺めていた。
青い空を、ぼーっと見てるとそれだけで気分が良い。

「ねえ。」
呼びかけられた気がして右を見ると王子と目が合った。
それだけで今日生きてて良かったと思ったくらいドキドキした。
「私?」
「うん。」
みんなで話す事はあっても、2人で話す事は殆どない。
前をチラッとみてみたけど、4人は4人で話してるみたい。
「どうしたの?消しゴムでも忘れたの?」
何か忘れ物でもしたのかなと思い筆箱を取り出す。
なんでか消しゴムと言ってしまった私。
かなりテンパってるけど消しゴムを探す。
「ううん、違う。」
消しゴムを取り出し、王子をみるとやっぱりこっちをみていた。
ちゃんとみたの初めてなんじゃないかってくらい目が合った。
凄く綺麗な顔立ちをしていて、目をそらせない。
ふと、優人の口が動いた。

「俺、愛理の事好きだよ。」

手から消しゴムが落ち、前に転がった。
消しゴムに気付き澪が拾い振り向いて
「あなたこれ転がしたよ〜」
「あ、澪ちゃんごめんね!ありがとう!」
澪ちゃんが机に消しゴムを置いてくれた。
そこで我に返った。

危なく勘違いする所だった。
さっき私が男に捨てられたって事を慰めてくれてるだけなのに。
あまりにも真っ直ぐこっちを見てくれてるものだから。

「そっかぁ...ごめんね。」

そう言って笑って窓をみた。
王子にも同情させてしまった事にやるせなくなってしまった。
情けなくなった。
でも名前で呼ばれたのに凄くドキドキした。
私の名前知ってたんだ。
今日王子に名前を呼んでもらったってだけで、しばらくは何があってもハッピーに生きていける気がする。
今の私の顔はきっと、いつにも増してキモイ顔をしているだろう。
そう思ったら恥ずかしくて窓から見える青空から目を離せなくなった。
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