王子の初恋は私な訳ない
数十分前に『まるで恋人同士』だなんて
口に出してしまったことを心の底から後悔した。
王子には好きな人が居るって最初からわかってたじゃないか。
それを知ってたのに近付いたのは私だ。
それなのに勝手に妄想して勝手に浮かれていた。
じゃあなんであんな事をしたの…?
なんて悲観的に考えてしまいそうになる。
「愛理」
右側から名前を呼ばれた気がして目線を向けた。
王子が少し眉間にシワをよせ眉尻を少し下げた顔でこちらを見ていた。
少し首を傾げて頬杖をついている。
前を見ると先生が黒板にコツコツとチョークで数字を書いている音が響き渡っている。
屋上からいつの間にか帰ってきて、いつの間にか授業が始まっていたようだ。
机をみるとちゃんと教科書とノートは出ていた。
「愛理どうしたの?」
もう一度声が聞こえ右を向いてみる。
午後の光を帯びて一段と綺麗な王子がこっちを見ている。
「あー…本当に綺麗だ。」
そう言って私は反対を向き窓の外、空を見上げた。
違う違う。
王子が私を利用したんじゃなく、王子の弱みにつけ込んだのは私。
良かったじゃない、叶わない恋だって最初から分かってたんだ。
少しでも最高の夢を見せてもらえてたんだよ。
感謝すれど恨むことでは無い。
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