王子の初恋は私な訳ない
………。

無言の時間が続いた。
状況が掴めなかったので少し頭をあげ彼女達を見ると、びっくりした様な顔でドアの方を見ていた。
空き教室なのに誰か来たのかと思い振り返ろうとしたら目の前を何かに覆われた。
目の前だけじゃなく体全体覆われていた。
「…王子?」
この感触この匂いこの雰囲気…私は知っていた。
私の体が覚えてしまっていた。
「俺の彼女でしょ?」
耳元でそう言われた気がした。
「…へ?」
「そういう事だから、帰るね。」
王子は彼女達にそう話し私の手を握った。
「……ひどいっ…」
か細い声で聞こえたかと思ったら真鈴様が涙を流していた。
「真鈴様を傷付けた!最低!!」
「全然いっみわかんないんだけど!!」
「真鈴様のがお前なんかより数倍可愛いのに!」
「たかが近所だっただけだろ?そんな糞乳でたぶらかしたのかよ!ありえねえ〜!」
彼女達が次々にそう言うと1人が凄まじい剣幕で私の方に歩み寄ってきた。
すると私の前に王子が立ち制し
「…ごめんね、俺今凄くムカついてるから優しく出来ない。」
いつもより少し早口で答えていた。
「少なくとも愛理は人を使って悪口を言わない。」
「っ!そんなつもりじゃ…っ!」
「正直者だから君みたいに泣く演技なんて出来ないよ?」
「…っ!?!?」
「そういう所じゃないかな、ちょっと鈍感すぎてムカつくけど。」
「……。」
「それに愛理は可愛いよ。」
そう言うと王子は私の手を引きながら空き教室を出た。
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