王子の初恋は私な訳ない

「・・・待ってたの。」
そう言いながら私から手を離さない王子
まるで私を待っていてくれたかのようだ。
いやでもそんな約束はしていないし
そんな訳がない。
「待ち合わせしてたのね。邪魔してごめんね。」
そう言っても手から抜け出せない。
「違うの。愛理を待ってたの。」
「え、どうして?」
もう訳が分からなくなってきた。

急に腕が解けたと思ったら、肩をひっぱられ後ろを振り向く形になり、王子と向かい合わせになった。
窓から入る夕焼けが眩しい。
「ねえ、俺のこと嫌い?」
両肩に王子の長い腕が乗っている。
逆光でよく見えないが、王子は哀しそうな表情にみえた。

頭がいかれてきた。
なんか泣いてる気がして咄嗟に王子の左頬を触わってみた。
ビックリしたようで一瞬目を閉じた。
長いまつ毛が綺麗だ。
「嫌いな訳ないじゃん、こんな綺麗なのに。」
…少し遅れて気がついた。
私、今、とっても、だ大胆な…
「ごっー!ごめん!!」
すると王子は私の事を一気に引き寄せ
ぴったりくっついてしまった。
左の耳元で
「スキ。」
と言われたような気がした。

王子の右腕が私の頭を包んでいた。
一瞬離れたと思ったら王子と目が合った。
一瞬瞼を伏せたかと思いきや


そのまま

キスを





…した気がする。
と言うのもやはり妄想なんだと思う。
でもやっぱりなんとなく唇に感触があった。
という事はたまたま口と口が触れてしまっただけの事故だったのではないか。
いや、事故に決まっている。
私と王子が…キス?そんな夢の様な事が起こる訳がない。
…あの後勘違いした私はそのままぼーっとしてしまい、その事実に気付くのが遅れてしまった。
大変申し訳ない程情けない顔を見せていたら不意にチャイムがなり現実に戻ったのだ。
その後すぐ王子には謝り慌てて教室を出たので今私の鞄には日誌がある。
開き直って帰路についた。








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