蛹の涙
結局、氷斑悠哉の押しに負けた。
私としたことが・・・・。
今は、迎えの車が来るそうなので、校門で待っている。
「あのさ、優鶴。」
「何?あと、名前で呼ばないで。それに、名前を教えた覚えもないけど。私の名前を呼んでいいのは、私が名前を教えた人だけだから。」
一定の距離さえ保っていれば、何も変わることなんかないんだ。
「俺が優鶴を見捨てたら、それは俺が俺ではない時だ。けど、その先の言葉、よく聞いとけよ?」
俺がを優鶴“見捨てたら”
その言葉だけがよく聞こえた私は、
あぁ、やっぱり現実はこんなもんだ。
と悟った。
まさか、見捨てたら、という、ただの一単語だけでこんなにも諦めがつくなんて。
一歩踏み出せば希望が
一歩下がれば絶望が
ずっと真ん中でさまよっていた私は、気がつけば、右足を後ろにさげていた。