かわいい君まであと少し
「怜子さん、上がってください。夕ご飯がであがっていますから」
 部屋に入るとテーブルには散らし寿司とベーコンのアスパラ巻きが並んでいた。
「うわ、ちらし寿司」
「見た目がかわいくできるんで、志穂ちゃんも喜ぶかなっと思ってこれにしたんです。予想以上に怜子さんが喜んでくれてよかったです」
 錦糸玉子の上にはニンジンが花形にくり抜いてあった。葉っぱに見立てるように絹さやが添えられている。
「あの、食べる前に写真撮ってもいいですか?」
「ええ、もちろん」
 私はスマホを構えた。せっかくだから志穂ちゃんも一緒に撮ろうとしたら、聡さんが「二人一緒に撮ったらどうですか? 僕が撮りますよ」と言ってくれた。
 スマホを渡して、志穂ちゃんを後ろから抱き締めるようにして構えた。
「志穂ちゃん、こっち見て。よし、ハイ、チーズ」
 シャッター音とフラッシュが同時に起こる。
「上手く撮れましたよ」
 スマホを見ると、志穂ちゃんと私、それからちらし寿司がちゃんと写っていた。
「じゃあ、食べましょう」
「そうですね」と言って、私と志穂ちゃんは手を洗い、聡さんは志穂ちゃんのエプロンを持って待っていた。
 志穂ちゃんにエプロンを着けて、さっそくちらし寿司を食べ始めた。
 志穂ちゃん用のちらし寿司は普通の白米に錦糸玉子が少なめに盛られている。
「この酢飯、団扇で扇ぐの志穂ちゃんが手伝ってくれたんですよ」
「そうなんですか。志穂ちゃんすごいな」

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