かわいい君まであと少し
 アパートから少し離れた駐車場に車を停める。
 後部座席のドアを開けて、志穂ちゃんのシートベルトを外した。荷物を肩に掛け、とろんとした目の志穂ちゃんを抱きかかえた。志穂ちゃんを落とさないように気を付けながらドアを閉め、ロックを掛けた。
 そこから数分も掛からずにアパートに着いた。一旦、自分の部屋によって着替え用意した。
 志穂ちゃんはベッドの上に座らせる。駐車場にいた時よりも、意識が冴えたみたいだった。
 荷物を纏め、今度は隣の部屋に移動する。
 これって二度手間だ。やっぱり私の部屋でいいよね。明日の朝、志穂ちゃんを連れて望月課長の部屋に行けばいいだけのことなのに。
 ゆたさんの我がまま。
 荷物をテーブルの上に置き、志穂ちゃんを座布団の上に座らせる。
「志穂ちゃん、これからお布団敷くから待っててね」
「あい」
 テーブルを望月課長がいつもやっているみたいに端によせる。布団を二組出し、並べて敷いた。
 それから服を着替えて、志穂ちゃんをお風呂に入れる。湯船から出して、すぐに体を拭き、オムツを着け、パジャマを着せる。そして髪を乾かす。
「さあ、志穂ちゃん、寝ましょうね」と言って、布団を掛けて明りを消した。
 さっき少し転寝をしてしまったせいで、ちゃんと眠ってくれるか心配だった。少し経つと静かな寝息が聞こえてきた。
 疲れた。いつもは二人でやっていることを一人でやるのは意外と大変だな。お母さんって、すごいよ。私なんて、たった一晩で大変とか言っちゃって。世のお母さんはこれを毎日やってるんだな。

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