かわいい君まであと少し
 それにしても、あの食材って、余ったやつではなくて買ったものな気がする。たぶん、望月課長が渡した食費が余った。それを現金のまま返しても、望月課長は絶対に受け取らない。だから敢えて物に替えたのだろう。志穂ちゃんの生活スタイルに合わせると、平日に私と望月課長が買い物に行くのは難しい。そこも見抜いてのことだろうな。
 天使な上に洞察力がすごい。聡さんみたいな人を旦那さんにしたら幸せだろうな。ただ浮気性の人には耐えきれないタイプだろう。女の嘘を見抜く男だ、聡さんは。
 聡さんのすごさに感服しつつ、お弁当箱を入れるバッグを探した。いつも使っているトートバッグは現在、志穂ちゃんの荷物入れとして望月課長の部屋にある。
 もうひとつ大きいのがあったと思うんだけど。
 段ボール箱の側面に書き込まれている文字を読みながら、何を入れたか思い出す。
 あ、そうだ。段ボールの中身、スマホで撮っておいたんだった。
 テーブルに置いてあるスマホを取り、フォルダを開く。
 確かこのフォルダに保存をしておいたはず。
 画面をタップすると、荷物がごちゃごちゃと写った写真が何枚も出てきた。
 これじゃなくて、これでもなくて、あ、これのバッグ。コートと同じ段ボール箱に入れてる。
 冬物・コートと書いてある段ボール箱を開くと、写真と同じように荷物が入っている。隙間に押し込まれるように入っていたトートバッグを引っ張り出した。
「うん、これなら使える」
 トートバッグとお弁当箱をテーブルの上に置く。せっかく開けた段ボール箱を、また閉じるのも面倒な気がして、ついでだと思い、それらも片付けた。おかげで押し入れに少し余裕ができた。

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