かわいい君まであと少し
「変な誤解を招いてしまったから、そのお詫びがしたいって言われたんだ。俺たちのほうは招待されてるんだよ」
　望月課長を見ると「安心した？」と、聞いてきた。
「別にお詫びされるほど、気にしてませんけど」
「でも俺と絵里さんの関係は気になってただろ」
「別に」
　望月課長に自分の感情が見透かされているのがなんか気に食わないと思った。
「シェフおすすめのペスカトーレです。こちらが最後のお料理となります」
　吉田さんが直々に運んできてくれたのは、私の大好きなペスカトーレだった。
「美味しそう。いただきます」
　パスタを口に入れると、魚介のうま味とトマトの酸味が広がった。
「吉田さん、これすごく美味しいです。私、ペスカトーレ、パスタの中で一番好きなんです。だからよく食べるんですけど、今まで私が食べたパスタの中で一番美味しいです」
「ありがとうございます。そう言っていただけると自信がつきます」
「いえ」
「実は」と、吉田さんは少し不安そうな顔で話し始めた。「オープの日に、絵里のご両親をここに招待しようと思っているんです。そこで僕の料理を食べてもらいたんです。それで何かが変わるかわかりませんが」
「頑張ってください。私、応援します。お二人の結婚がうまく行くとこを」
「ありがとうございます。どうぞごゆっくりお召し上がりください」
　吉田さんは厨房へ戻り、再び二人っきりになった。
「怜子、ちゃんと話しておきたいことがあるんだ」
「はい」

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