かわいい君まであと少し
私はフォークを置き、望月課長の目を見た。望月課長も私の目をしっかりと見ていた。
「俺は怜子に普段の自分を見てもらたいと思って、志穂の面倒を一緒に見てくれと言った部分もあるんだ。確かに俺、一人では志穂の面倒を見るのは到底無理だった」
 望月課長は水を少し飲んで、話を続けた。
「三月に怜子に告白をして断られたとき思ったんだ。怜子は上司の俺しか見てない。だから断ったんだって。なら普段の自分を見てもらってから、もう一度考えて欲しい。だから俺はあのとき諦めないって言ったんだ。その言葉に顔を赤くした怜子を見たら、余計に諦められなくなった」
 望月課長が言葉を切る。そして短い沈黙が訪れる。
 私は何も言わず、望月課長を見つめた。
「俺は、この一週間、普段の玲子のことを知れて本当によかったよ。初めて会ったときと同じ印象のままだった。しっかり者で、愛情を持って人を怒ることのできる人だ。これから俺は怜子のプライベートには関わらない。職場の上司と部下に戻る。俺から離れたところでちゃんと考えてほしいんだ。そして、自分の意思で俺のところに来てくれ」

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