かわいい君まであと少し
「ここにゴミ出しのこととかが入っているので、あとで確認してくださいね」と言って、A4サイズの茶封筒を渡された。
「はい、わかりました」
 杉田さんは私の顔を見て、ふふっと笑った。
「どうかしましたか?」
「この前の契約のときには言わなかったけれど、藤崎さんが住むお部屋、すごいジンクスがあるのよ」
「ジンクスですか?」
「二〇二号室に住んだ女性は素敵な恋ができるのよ」
 それを聞いて、ちょっとびっくりした。女子高生が喜びそうな内容で、何と答えたらいいかわからなかった。
「嘘っぽいって思うでしょ。でも、あなたのお姉さんで三人目なのよ。みんな、お付き合いしている人や気になる人もいない時に、二〇二号室に引っ越してきて一年以内に結婚や婚約をしているの」
「そうなんですか」
 三人連続でそういうことが起こればジンクスだの縁起がいいだのという話になるのはわかる。ただ、私でそのジンクスを終わらせてしまう気がする。
「藤崎さんにもいいこと起こるといいわね。恋愛だけじゃなくて、仕事や友人関係とかね」
「はい。楽しく新生活を送ろうと思います。では、失礼します」
 杉田さん家から部屋に戻ると、そばのいい匂いがした。
「ただいま。いい匂い」
「おかえり。もうすぐでできあがるから、テーブル拭いてくれる?」
「わかった。あれ、お義兄さんは?」

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