かわいい君まであと少し
「ほれ、ここに寝かせて」
赤ちゃんを敷布団に寝かせ、布団を掛けると気持ちよさそうに眠った。
「よかった、ちょうど眠ってくれて」
望月課長は少し安心した感じで赤ちゃんを眺めた。
「そうですね。私は部屋に戻ります」
「いや、コーヒー入れたし、もう少しここにいてくれ」
「どうしてですか?」
「いや、志穂が目覚めたとき、どうなるかわからないから不安で」
「それなら彼女呼べばいいんじゃないですか」
私は望月課長から視線を外して言った。
「彼女なんていないけど」
「え? お見合いしたじゃないですか。専務のお嬢さん。時々、一緒に帰ってますよね?」
「へえー、噂信じてるんだ。しかも少し怒ってるよね? やきもち?」
「別に。違います」
「確かにお見合いはした。でも、向こうから断られたよ。俺も断るつもりだったし」
今、望月課長が“俺”って言った。仕事では“私”なのに、プライベートでは“俺”なんだ。ちょっと意外。私のイメージでは“僕”だったけど。
「おい、話聞いてるか?」
「聞いてますよ。お見合い断ったんですよね。でも、会ってるじゃないですか」
「あれは、ちょっと事情があって相談に乗っているんだ」
「そうですか」
「それに、俺は藤崎を諦めないって宣言してるはずだけど。忘れちゃった?」
「忘れてませんけど」
「けど?」
「人の心なんて、脆いです。簡単に変わっちゃいますよ」
赤ちゃんを敷布団に寝かせ、布団を掛けると気持ちよさそうに眠った。
「よかった、ちょうど眠ってくれて」
望月課長は少し安心した感じで赤ちゃんを眺めた。
「そうですね。私は部屋に戻ります」
「いや、コーヒー入れたし、もう少しここにいてくれ」
「どうしてですか?」
「いや、志穂が目覚めたとき、どうなるかわからないから不安で」
「それなら彼女呼べばいいんじゃないですか」
私は望月課長から視線を外して言った。
「彼女なんていないけど」
「え? お見合いしたじゃないですか。専務のお嬢さん。時々、一緒に帰ってますよね?」
「へえー、噂信じてるんだ。しかも少し怒ってるよね? やきもち?」
「別に。違います」
「確かにお見合いはした。でも、向こうから断られたよ。俺も断るつもりだったし」
今、望月課長が“俺”って言った。仕事では“私”なのに、プライベートでは“俺”なんだ。ちょっと意外。私のイメージでは“僕”だったけど。
「おい、話聞いてるか?」
「聞いてますよ。お見合い断ったんですよね。でも、会ってるじゃないですか」
「あれは、ちょっと事情があって相談に乗っているんだ」
「そうですか」
「それに、俺は藤崎を諦めないって宣言してるはずだけど。忘れちゃった?」
「忘れてませんけど」
「けど?」
「人の心なんて、脆いです。簡単に変わっちゃいますよ」