かわいい君まであと少し
「なるほど」
 明らかに付き合っているなとわかる人たちもいるが、全く気がつかれず突然結婚をしてびっくりされる人たちもいる。
 望月課長の場合は後者のタイプの人たちも気が付いているんだろうな。

「で、藤崎、どうすんの?」
「何をですか?」
「松本」
「ああ、今月の初めに別れました」
「そっか」と言う望月課長はすごく嬉しそうだった。
「人の不幸を喜ばないでください」
「悪い。でも俺には幸運だから。藤崎がフリーになったってことは、俺にチャンスが大量に降りかかってきたってことだろう」
「さあ、大量かどうかもわかりませんけど」
「大量だろ。引っ越したらお隣さん同士。今こうして、一緒に昼下がりをまったり」
「そうですね」
 そっか。お隣さんなんだよね。なんか変な展開になったな。
「そろそろ帰ります」
「えっ」
「赤ちゃん、よく寝てるみたいだし、私が居なくても大丈夫でしょ」
「あ、ああ」

 私と望月課長が座イスから立ち上がった時だった。赤ちゃんが泣き始めた。
 え、いつ起きたの?
 私と望月課長は急いで赤ちゃんの所へ行き、二人掛かりであやした。
 望月課長が抱っこをし、私が手を握り、軽く背中を摩ってあげる。すると、体を少しよじり、私のほうに両手を伸ばしてきた。私が抱っこをすると、少しだけ鳴き声が弱くなった。

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