かわいい君まであと少し
 あれ、お尻のあたりが温かい。
「望月課長、たぶんオムツです」
「えっ?」
「え、じゃなくて、オムツ」
「家にオムツなんかあるわけないだろ」
「妹さんが置いていった荷物の中に入ってないか、確認してください」

 望月課長は「あっ」と言って、靴箱の上に置いたままになったボストンバックと紙袋を持ってきた。
 紙袋の中を見てからボストンバックのチャックを開けた。
「あ、あった」

 私は慣れない手つきでなんとかオムツを交換した。
「ああ、泣き止んでよかった」
 赤ちゃんは私の膝に座り、ご機嫌だ。
「この子、望月課長の姪ですよね」
「ああ、そうだよ。妹夫婦の子供だよ」
「身内なのに、どうして嫌われているんですか?」
「わからん。生まれたときから、こんな感じだった」
「子供嫌いですか?」
「いや、むしろ好きなんだけどな」
 望月課長が赤ちゃんの頭を撫でると、赤ちゃんは気持ちよさそうにしていた。
 ただ、嫌われているわけではないんだ。

「私、どうすればいいですか? もう帰って大丈夫ですか?」
「俺としては、今日の夕飯まではここに居てほしい」
「わかりました」
 望月課長はボストンバックの中に入っているのをテーブルの上に広げた。
 着替え、おもちゃ、絵本、着替え、オムツなど。それにA5サイズのノートが入っていた。

< 33 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop