かわいい君まであと少し
「さて、志穂を風呂に入れようか。これが志穂の着替え、あとバスタオル」
「はい」
 敷布団の上に、オムツや着替えを置き、バスタオルを持った。

 望月課長は脱衣所で志穂ちゃんの服を脱がせ、着たいたものを洗濯機に投げ込んだ。
 ノートに書いてあった通りに志穂ちゃんをバスタブの縁につかまらせた。望月課長はジーンズの裾をまくり上げて、シャワーを手に取った。

 温度を確認して「お湯かけるぞ」と言って、志穂ちゃんにシャワーを当てた。
 シャワーだけで泣いてしまうのではないかと思ったけれど、大丈夫だった。
 望月課長は「髪の毛洗うよ」「顔洗うぞ」「腕洗うよ」と声を掛けながら進めていく。

 志穂ちゃんが私のほうを見たときは、アヒルのオモチャを使って「お風呂は楽しいな」「そうだね」みたいな、一人人形劇を繰り広げた。そうすると志穂ちゃんは「アヒル、アヒル」と言って、望月課長の肩をバシバシ叩いていた。おかげで望月課長のTシャツは予想以上に濡れてしまった。
 体が洗い終わり湯船に志穂ちゃんを入れる。そしてアヒルのオモチャを浮かせてあげた。

「子供をお風呂に入れるって大変なんだな」と言って、望月課長はタオルで顔や腕に付いた滴を拭いた。
「ですね。志穂ちゃん、大人しくてよかったですね」
「ああ、暴れられたらどうしようかと思ったよ」
「志穂ちゃん、お風呂気持いい?」

 ピンク色のアヒルが水面を泳いでいるように動かしながら聞くと、水面を両手でパシャパシャと叩いて、にこにこと笑っている。
 そっか、楽しいのか。

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