かわいい君まであと少し
 もう少し様子を見てから、また寝かしつけないと。
「なあ、薄手の毛布だと暑いみたいだから、夏掛けのほうがいいかな?」
 押し入れの前で、がさごそと音を立てながら望月課長が言った。
「そうですね」
 敷布団の上に夏掛けを広げ、さっきまで使っていた薄手の毛布をしまうと、望月課長が私の隣に座った。そして、志穂ちゃんを膝の上に乗せる。

「志穂、ごめんな。暑かったんだな。今度は大丈夫だから寝な」
 志穂ちゃんを横にして、部屋の電気を消した。
「志穂、おやすみ」
「おやすみ、志穂ちゃん」
 八時に寝かしつけた時のように、軽くお腹のあたりを叩き、少し経つと寝息が聞こえてきた。

「望月課長、すみません。私、寝ちゃったみたいで。毛布掛けてくれてありがとうございます」と、志穂ちゃんが起きないように小声で言った。
「ああ、いいよ。気にするな」
 起きた時は志穂ちゃんのほうに意識がいっていたから気が付かなかったけれど、足元のほうに丸まった毛布があった。起きた時に跳ね飛ばすような形になったせいだろう。
 私と望月課長は志穂ちゃんを挟むようにして、いわゆる川の字で寝ていたらしい。

「あの、今何時ですか?」
 望月課長が近くに置いてあったスマホを手に取り「十二時半過ぎ」と言った。
「もう、そんな時間ですか? 長居してしまいすみません。部屋に戻ります」
「あ、ちょっと待って」
「はい」

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