かわいい君まであと少し
「お茶入れるから。ちょっと話がしたい」
「わかりました」
 望月課長は静かな足取りでキッチンへ向かった。
 私は志穂ちゃんが眠っているのを確認してから、端に寄せられたテーブルのほうへ移動した。

「はい、ほうじ茶。熱いから気をつけろ」
「ありがとうございます。いただきます」
 マグカップに入ったほうじ茶をゆっくりと口に付ける。香ばしい味が口に広がった。

「明日というか、日付が変わってるから今日か。藤崎は何か予定入ってるか?」
「いいえ、とくにないです」
「引っ越し関係のことも、もう大丈夫か?」
「はい、昨日今日で生活にするには問題ない程度まで片付けましたから」
「今日も一緒に志穂の面倒を見てほしいんだ」
 やっぱり、そんなことだろうと思った。

「いいですよ」
「いいのか?」
「はい。だって、望月課長に志穂ちゃんのご飯を作るのは無理だと思うので」
 望月課長は少しムッとした顔で私を見た。
 思ったことを言ったまでだ。

「で、今日の予定なんだけど、俺たちが仕事に行っている間、ベビーシッターをしてくれる人間に会いに行きたいんだ」
「預かってくれる人、見つかったんですね。よかったです」
「ああ。そこに藤崎も一緒に来てほしい」
「いいですよ。あの、志穂ちゃんって、何時に起きることになってますか?」
 望月課長がノートを広げ、パソコンの横に置いてある、電池式の小さなスタンドライトを持ってきた。
「えっと、六時半。早いな」

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