かわいい君まであと少し
「どうした?」
 考え事をしていたせいで、変な顔をしていたのかもしれない。
「なんでもないです」と言って、自分も玉子焼きを口に入れた。
「望月課長、ベビーシッターをしてくれる人に会う約束って何時ですか?」
「十一時。ご飯食べ終わって、少しゆっくりしたらそこの近くの公園にでも行こう。昨日の昼過ぎから、志穂はずっとこの部屋に居たからな」
「わかりました」
 一人暮らしをしていると自分から進んで作ることない雑炊。久しぶりに食べてみると意外と美味しいものなんだなと思った。
 雑炊を食べ終わった望月課長は志穂ちゃんを見てくれている。私は二人を眺めながら雑炊を口に運んだ。
「どうした、こっち見つめて?」
「いえ、親子みたいだなと思って。まあ、二人は親戚ですから、そう見えてもおかしくはないんでしょうけど」
「親子か。俺がパパで、藤崎がママか」と、目を細めて嬉しそうに望月課長は言った。
「私を含めないでください。私はただのお隣さんなので」
「ただのお隣さんじゃなくて、近々俺の彼女になる人だろ」
「どうぞご勝手に。未来は簡単に予想外のほうへ動くですから」
「そうか。なら、今日の夜には藤崎が俺の彼女になっている場合もあるのか」
 望月課長の頭の中はお花畑ではないか、と思った。
 なぜ、そんなにプラス思考なんだろう。なぜ、そんなに私のことが好きなんだろう。
 そして私も志穂ちゃんが心配だからと言って、こんなに望月課長の近くに来てしまっているのだろ。

< 53 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop