かわいい君まであと少し
 自分の行動と感情が噛み合っていな気がした。
「あ、藤崎」
「はい」
「今は会社じゃない。休みだ。敬語禁止。望月課長呼びも禁止」
「じゃあ、なんて呼べば?」
「普通に悠太でいいじゃない?」
「なんで、私が望月課長を名前で、しかも呼び捨てをしなくちゃならないんですか!」
 私の声が大きかったせいで、志穂ちゃんは少しびっくりしてしまい、スプーンから雑炊がこぼれた。
 志穂ちゃんに「ごめんね」と謝り、雑炊を口元に運ぶ。にこっと笑った志穂ちゃんは雑炊を食べてくれた。
 よかった、泣いたりしないで。
 望月課長はコーヒーを飲みながら普通に話を再開させた。
「俺がそう呼んでもらいたいから。俺は怜子って呼ぶから」
「勝手に、呼び捨てにしないでください」
「じゃあ、怜子ちゃん?」
「ちゃん付け呼ばれるような年齢でもありません」
「やっぱり怜子でいいな。怜子は悠太」
「いや、無理です」
 志穂ちゃんは、私が話すと私の顔を見て、望月課長が話すと望月課長を見るというのを繰り返している そして私が持っていたスプーンを取り、自分で雑炊を食べ始めた。
 望月課長はカタカタと動くお椀を手で押さえながら「どうして?」と聞き返してきた。
「上司でお隣さんをそんなふうに呼べません」
「本人がいいって、言ってるんだからいいんだよ。ほら、呼んでみろ、悠太って」

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