かわいい君まであと少し
 望月課長はコーヒーを一口飲んでから、もう一度「ありがとう」と言った。
「あと、妹さんに僕のことを連絡したほうがいいと思います」
「あっ、私のことも言っておいてください」
「そうだな」
 望月課長はスマホを取り出した。画面を操作し、私にスマホを渡してきた。
「ごあいさつ、自分で打て」
「はい」
 えっと《ご主人のお加減いかがですか。望月課長と一緒に志穂ちゃんの面倒をみることになりました。責任を持って志穂ちゃんと一緒に過します。 藤崎怜子》よし。
「聡さん、どうぞ」
 スマホを聡さんに渡し、聡さんも文章を打ち始めた。
 指の動き早い。さすがエンジニアだな。
 思わず、聡さんの指を凝視してしまう。
「先輩、できました」
 望月課長も文章を打ち込んでいるらしい。それが終わると志穂ちゃんの寝顔を撮った。
「よし、送信」
 たぶん、写真も一緒に送ったのだろう。
「あ、志穂ちゃん、起きたみたいですよ」と言って、聡さんがベッドのほうへと行った。
「志穂ちゃん、よく眠れた? ほら、れいとゆたが帰ってきてるよ」
 志穂ちゃんは起き上がり私たちの顔を見ると「れい、ゆた」と言って、両手を胸の高さにまで上げた。
 私が右手を取り、望月課長は左手を取った。
「だだいま、志穂ちゃん、よく眠れたかな?」
「志穂、ただいま」
「おかえりなちゃい」
 小さな手からじんわりと優しい気持ちが流れてきた。
「さて、そろそろ帰るか」

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