かわいい君まであと少し
「やっと着替えが終わった。一体なんだったんだ」
 できあがった朝ご飯をテーブルに並べながら答えた。
「たぶん、今日は黄色のカーディガンを着たくなかったんじゃないですか?」
「え? こんな小さい頃から女は服にうるさいのか」
「服にうるさいんじゃなくて、おしゃれなんです。よく言うじゃないですか、小さくても女だって」
「女ってすごいな」
「男が子供すぎるんですよ」
 望月課長は「純粋だと言ってほしいね」と言いながら、志穂ちゃんにエプロンをつけていた。
「お、朝食ってかんじだな」
「昨日の肉じゃがをアレンジしました」
「すごいな、肉じゃががオムレツになるなんて」
 昨日の夕ご飯に出した志穂ちゃんの肉じゃがは薄味で、それを少し多めに作っておいたのだ。それにしらすと溶き卵を加えて焼けば和風オムレツになる。
「ケチャップかけます? ミニパックのしかないんですけど」
「かける」
 望月課長は全体にケチャップをかけていると、オーブンレンジから音がした。
「あ、トーストができたみたいですよ」
「取ってくる」
 自分のお皿を持って望月課長はキッチンへ行った。
 私はただの食パン。志穂ちゃんはチーズトーストにした。パンにしらす、ニンジン、ジャガイモ、チーズを乗せてオーブンレンジで焼いた。時間がない朝には持って来いのメニューだ。

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