ピュアに恋して♪


――バランス・・・崩して・・・っ手を伸ばした・・・けど・・・間に合わなくて・・・車・・・っ




断片的に聞こえる秋人の声。
それは、電波のせいではなく秋人が泣きじゃくっているからで。

いったい何があったのか、ここまで秋人が取り乱すなんてただ事ではないことはわかるのに。



すると、電話の向こうからサイレンの音が近づいてくる。
電話のすぐそばに止まったのか、サイレンの音はすぐ側で止まった。



胸騒ぎが。




――大丈夫ですか!?意識は・・・!




電話の向こうが慌ただしくなった。





――君、この子の連れ?この子の名前はわかるかい?・・・え・・・えと、し、しらいし・・・あこ・・・・




白石亜子。
秋人の声で紡がれた名前に、心臓が音を立てる。




ドクン。




「おい、音玖、これって!」




なにも欲しがらない。
失くした時、辛いから―――――。




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