僕達の犯した罪と秘密
「はーい、4組担当の藤井 祐翔です」
クラス担当が言い終わるとそれぞれ今年のクラスに移っていった。
僕は誰にも気付かれないように4組へ行った。
4組に入ると藤井がいた。藤井は見た目的に若そうだし、新人かもしれない。珍しいことだった。大抵、4組にはベテラン教師が来るからだ。そんなことより、今はメンバーの確認が忙しかった。
5年の時の各クラスから4人ずつだから、6年4組は12人。1組は30人。2組は31人。3組も31人。
人数的には少ないが、一番トラブルが多いだろう。
「改めて宜しくな。藤井 祐翔だ。」
学年集会とは少し違った雰囲気だった。
「じゃあ、自己紹介してくれ。一番から」
4組は成績順に出席番号が決められている。僕は―5番か。番号を確認して1番の席を見る。そこには美琴が座っていた。美琴が1番…。大丈夫だろうか。美琴にあの役割は果たせるのだろうか―。
そんな事を考えていると美琴が席を立った。
ギィと椅子が悲鳴をあげた。
「1番、十和田 美琴。」
美琴はそれだけ言って、また椅子の悲鳴を聞かせた。僕と同じ1組だった。
「次は、2番。」
藤井が温度のない声で急かす。
「2番、榊原 愛美。」
美琴の自己紹介と同じように番号と名前だけを言って椅子の悲鳴を聞かせる。愛美は2組だから関わりはなかった。
「3番、古澤 桃李。」
藤井に言われる前に急いで言ったという感じだった。桃李は確か3組だったから関わりはない。
「4番、雪白 梓。」
それに続いて早口で言った。梓は2組だ。
「5番、霧島 柊翔。」
これが僕の名前。僕も早口だった。僕は1組。
「6番、如月 華音。」
少しゆっくりめだった。華音は確か2組。
「7番、七瀬 圭。」
早口ではないがゆっくりでもなかった。圭は3組。
「8番、丘咲 淳二。」
淳二はとても早口だった。淳二も3組。
「9番、田頭 李雄。」
淳二を初め早口にもどる。李雄は僕と同じ1組。
「10番、葛西 夢羽。」
もちろん早口だった。夢羽は2組。
「11番、芹崎 雅。」
また早口。雅は1組。
「12番、赤星 希夏。」
最後もやっぱり早口。希夏は3組。いじめられる可能性が最も高い子。
1組から来たのが1番 美琴と5番 僕と9番 李雄と11番 雅。
2組から来たのが2番 愛美と4番 梓と6番 華音と10番 夢羽。
3組から来たのが3番 桃李と7番 圭と8番 淳二と12番 希夏。
女子 6人。男子 6人。雅はよく間違われるが男子だ。
「ありがとう。じゃあ十和田、頼んだ。誰か1人に手伝ってもらうといい。またあとでくる。」
あれこれ考えているうちに藤井はどこかへ行った。手伝ってもらう1人に選ばれた人は何番だろうが権力は上がり確実にいじめられない。大体は2番が選ばれる。もしここで12番を選べば希夏はいじめられない。だが、11番と10番の危険性が同じくらいまで上がる。それは、いじめられるのは大体が女子だ。だからこそ、10番も上がるのだ。きっとそれを美琴は充分に理解している。美琴、誰を選ぶんだ?
「じゃあ、今のところ手伝ってもらうことは無いからあとで必要になったら選ぶ。それでいいよね。」
相変わらず冷たい声が凍りついた空気を少し和ませた。その考えはなかった。さすが美琴だ、と思った。誰も返事をすることは無かったが逆らえるやつは権力上いない。もう既にスクールカーストという各位は出来ている。大人が思うほどゆっくり出来るものではないのだ。
「じゃあまず、クラスの目標設定。案があるひと。」
その言葉に焦るように手が挙がる。このクラスでは美琴に見捨てられれば終わりだ。だからこそ、みんな美琴には従順だ。
「ない人は挙げないでね。」
美琴の言葉が胸に突き刺さる。ここで下ろせば危険だ。でも、ないのに挙げたままで当てられた時、言えない方が見捨てられる。
誰かが手を下ろした。そしてもう1人。ついには誰も挙げていなかった。それには全く驚かずに美琴が口を開く。
「私は、仲のいいクラスにしたいと思ってる。成績が悪い人はみんなで引き上げる。つまり、みんな平等。[ひとりはみんなのために みんなはひとりのために]にしたいと思ってる。どうかな?」
僕はひねくれた解釈をして連帯責任という言葉がピッタリだなと思った。なぜか、そう捉えてしまう。
「質問・意見はない?ないなら、これにする。」
美琴がそういうと桃李が手を挙げた。
「古澤 桃李。」
今の美琴は全員を呼び捨てで呼べる。いや、呼び捨てじゃなければなめられる。
「質問で、それは上下関係を取り除くんですか?」
桃李は上司に物申すような態度だった。
「私は、最小限の上下関係は仕方ないと思ってる。でも、できる限りの上下関係は取り除きたい。」
美琴は桃李の質問にテキパキと答えた。
「私は、今までの4組にしたくない。上下関係に縛られたって楽しくない。協力する時はする。みんなで勉強もして成績をあげたり、自分たちで磨きあえるクラスにしたい。どのクラスよりも団結しようよ。」
今の美琴の言葉には説得力があった。僕も賛成だった。でも、どこか胸騒ぎを覚えた。
「どうかな?」
クラス担当が言い終わるとそれぞれ今年のクラスに移っていった。
僕は誰にも気付かれないように4組へ行った。
4組に入ると藤井がいた。藤井は見た目的に若そうだし、新人かもしれない。珍しいことだった。大抵、4組にはベテラン教師が来るからだ。そんなことより、今はメンバーの確認が忙しかった。
5年の時の各クラスから4人ずつだから、6年4組は12人。1組は30人。2組は31人。3組も31人。
人数的には少ないが、一番トラブルが多いだろう。
「改めて宜しくな。藤井 祐翔だ。」
学年集会とは少し違った雰囲気だった。
「じゃあ、自己紹介してくれ。一番から」
4組は成績順に出席番号が決められている。僕は―5番か。番号を確認して1番の席を見る。そこには美琴が座っていた。美琴が1番…。大丈夫だろうか。美琴にあの役割は果たせるのだろうか―。
そんな事を考えていると美琴が席を立った。
ギィと椅子が悲鳴をあげた。
「1番、十和田 美琴。」
美琴はそれだけ言って、また椅子の悲鳴を聞かせた。僕と同じ1組だった。
「次は、2番。」
藤井が温度のない声で急かす。
「2番、榊原 愛美。」
美琴の自己紹介と同じように番号と名前だけを言って椅子の悲鳴を聞かせる。愛美は2組だから関わりはなかった。
「3番、古澤 桃李。」
藤井に言われる前に急いで言ったという感じだった。桃李は確か3組だったから関わりはない。
「4番、雪白 梓。」
それに続いて早口で言った。梓は2組だ。
「5番、霧島 柊翔。」
これが僕の名前。僕も早口だった。僕は1組。
「6番、如月 華音。」
少しゆっくりめだった。華音は確か2組。
「7番、七瀬 圭。」
早口ではないがゆっくりでもなかった。圭は3組。
「8番、丘咲 淳二。」
淳二はとても早口だった。淳二も3組。
「9番、田頭 李雄。」
淳二を初め早口にもどる。李雄は僕と同じ1組。
「10番、葛西 夢羽。」
もちろん早口だった。夢羽は2組。
「11番、芹崎 雅。」
また早口。雅は1組。
「12番、赤星 希夏。」
最後もやっぱり早口。希夏は3組。いじめられる可能性が最も高い子。
1組から来たのが1番 美琴と5番 僕と9番 李雄と11番 雅。
2組から来たのが2番 愛美と4番 梓と6番 華音と10番 夢羽。
3組から来たのが3番 桃李と7番 圭と8番 淳二と12番 希夏。
女子 6人。男子 6人。雅はよく間違われるが男子だ。
「ありがとう。じゃあ十和田、頼んだ。誰か1人に手伝ってもらうといい。またあとでくる。」
あれこれ考えているうちに藤井はどこかへ行った。手伝ってもらう1人に選ばれた人は何番だろうが権力は上がり確実にいじめられない。大体は2番が選ばれる。もしここで12番を選べば希夏はいじめられない。だが、11番と10番の危険性が同じくらいまで上がる。それは、いじめられるのは大体が女子だ。だからこそ、10番も上がるのだ。きっとそれを美琴は充分に理解している。美琴、誰を選ぶんだ?
「じゃあ、今のところ手伝ってもらうことは無いからあとで必要になったら選ぶ。それでいいよね。」
相変わらず冷たい声が凍りついた空気を少し和ませた。その考えはなかった。さすが美琴だ、と思った。誰も返事をすることは無かったが逆らえるやつは権力上いない。もう既にスクールカーストという各位は出来ている。大人が思うほどゆっくり出来るものではないのだ。
「じゃあまず、クラスの目標設定。案があるひと。」
その言葉に焦るように手が挙がる。このクラスでは美琴に見捨てられれば終わりだ。だからこそ、みんな美琴には従順だ。
「ない人は挙げないでね。」
美琴の言葉が胸に突き刺さる。ここで下ろせば危険だ。でも、ないのに挙げたままで当てられた時、言えない方が見捨てられる。
誰かが手を下ろした。そしてもう1人。ついには誰も挙げていなかった。それには全く驚かずに美琴が口を開く。
「私は、仲のいいクラスにしたいと思ってる。成績が悪い人はみんなで引き上げる。つまり、みんな平等。[ひとりはみんなのために みんなはひとりのために]にしたいと思ってる。どうかな?」
僕はひねくれた解釈をして連帯責任という言葉がピッタリだなと思った。なぜか、そう捉えてしまう。
「質問・意見はない?ないなら、これにする。」
美琴がそういうと桃李が手を挙げた。
「古澤 桃李。」
今の美琴は全員を呼び捨てで呼べる。いや、呼び捨てじゃなければなめられる。
「質問で、それは上下関係を取り除くんですか?」
桃李は上司に物申すような態度だった。
「私は、最小限の上下関係は仕方ないと思ってる。でも、できる限りの上下関係は取り除きたい。」
美琴は桃李の質問にテキパキと答えた。
「私は、今までの4組にしたくない。上下関係に縛られたって楽しくない。協力する時はする。みんなで勉強もして成績をあげたり、自分たちで磨きあえるクラスにしたい。どのクラスよりも団結しようよ。」
今の美琴の言葉には説得力があった。僕も賛成だった。でも、どこか胸騒ぎを覚えた。
「どうかな?」