timetraveling
家族だもんね
ようやく寒い冬のはしっこが終わりに近づいて、今日は小春日和の日曜日。
昨年末のニュースでは暖冬予想だったけど予想は大ハズレ。
今から3年前の春に私たちは結婚した。
次の4月7日で3回目の結婚記念日。
「あれ?おはよう。日曜なのに早いんだね」
「おはよう理沙。だってあれだけ泣きゃ誰でも目が覚めるよ(笑)」
「だよね(笑)」
「だよな(笑)」
片桐家は片桐まこと29歳、理沙28歳、そして2歳になる娘、咲希の3人家族。
家のすぐ隣にはまことのご両親が住んでいる。
お義父さんとお義母さんはとっても優しくて、両親のいない私にとって本当の父母みたいな存在だ。
「じゃ、始めるか」
「まこと好きだねぇ。もしかしてハマってる?」
「ああ。咲希はこれが好きだからな」
そして…
咲希が産まれてすぐにご両親が買ってくれた可愛いカエルの手押し車につかまらせてゆっくりと支えながら押す。
これがまことと咲希のお気に入りみたい。
「咲希、上手くなったなぁ。やっぱ俺の特訓の成果だな」
「特訓て(笑)」
こうして家族で笑ったり、みんなで一緒に食事したり、お出かけしたり、何気ない事のすべてが私の宝物。まことに出会えた私は本当に幸せだ。
そう、あの日…
―5年前―
あの頃の私は両親が事故で亡くなった事を誰にも言わずに、1人で沈んでいた。
「理沙、どうした?」
「え…ううん。なんでもないよ」
「なんかあった~?恋でもしちゃったかな~?」
「やだミキ、違うよ、そんなんじゃない」
「へ~あやしい~(笑)」
「違うったら」
「そっか~なんなら思い切って合コン行く?理沙可愛いからきっとうまくいくよ。本社の中山君とか蔵本先輩でしょ、後輩の井上にあと取引先の嶋田部長も理沙が気になるらしいよ~」
「か…からかわないでよ、今はそんな…」
「本当だよ(笑)」
「……」
「そっか…ねぇ理沙、なんか悩みあるなら言って。私たち友達じゃん?」
「ミキ…」
「ん?」
「私ね…私のね…」
泣いちゃった。亡くしてすぐだったから余計に溢れた。
「理沙…」
ミキは人目もはばからず私を抱きしめてくれた。
「泣くな。いや、今なら思い切り泣いていいよ。あたし、軽はずみだった。ごめんなさい」
私の顔は涙でボロボロ。
そんな私をミキは抱きしめ直してくれた。
「今夜さ、あたしん家で家呑みしない?くだらない話してさ」
「私、そんな呑めないよ」
「ではわらわが特製ミルク酒を作ってしんぜよう」
ミキは両こぶしを腰に当てて反り返った。
それを見て私は思わず表情が緩む。
4歳年下で同僚、誕生日が1日違い。でも今はそんなミキがとっても頼もしく感じる。
「ミキ、そんな呑めるの?」
「大学時代のひとつ年上の先輩が酒豪でね(笑)あたし、普段は呑まないけど何かあった時は呑むよ。忘れないように忘れる為に」
「忘れないように忘れる…」
「そう。今までとこれからの自分を大切にする為に」
「響いた」
「でも種明かしするとこれ、あたしが言った言葉じゃないんだ」
「ん?名言の主は?」
「優子さんっていう人。さっき言った大学の先輩だよ。まぁ優子さんも誰かから聞いたみたいだけど(笑)」
「そっか…なんかいい話聞いちゃったな」
「あたしの特製ミルク酒で手伝うよ」
昨年末のニュースでは暖冬予想だったけど予想は大ハズレ。
今から3年前の春に私たちは結婚した。
次の4月7日で3回目の結婚記念日。
「あれ?おはよう。日曜なのに早いんだね」
「おはよう理沙。だってあれだけ泣きゃ誰でも目が覚めるよ(笑)」
「だよね(笑)」
「だよな(笑)」
片桐家は片桐まこと29歳、理沙28歳、そして2歳になる娘、咲希の3人家族。
家のすぐ隣にはまことのご両親が住んでいる。
お義父さんとお義母さんはとっても優しくて、両親のいない私にとって本当の父母みたいな存在だ。
「じゃ、始めるか」
「まこと好きだねぇ。もしかしてハマってる?」
「ああ。咲希はこれが好きだからな」
そして…
咲希が産まれてすぐにご両親が買ってくれた可愛いカエルの手押し車につかまらせてゆっくりと支えながら押す。
これがまことと咲希のお気に入りみたい。
「咲希、上手くなったなぁ。やっぱ俺の特訓の成果だな」
「特訓て(笑)」
こうして家族で笑ったり、みんなで一緒に食事したり、お出かけしたり、何気ない事のすべてが私の宝物。まことに出会えた私は本当に幸せだ。
そう、あの日…
―5年前―
あの頃の私は両親が事故で亡くなった事を誰にも言わずに、1人で沈んでいた。
「理沙、どうした?」
「え…ううん。なんでもないよ」
「なんかあった~?恋でもしちゃったかな~?」
「やだミキ、違うよ、そんなんじゃない」
「へ~あやしい~(笑)」
「違うったら」
「そっか~なんなら思い切って合コン行く?理沙可愛いからきっとうまくいくよ。本社の中山君とか蔵本先輩でしょ、後輩の井上にあと取引先の嶋田部長も理沙が気になるらしいよ~」
「か…からかわないでよ、今はそんな…」
「本当だよ(笑)」
「……」
「そっか…ねぇ理沙、なんか悩みあるなら言って。私たち友達じゃん?」
「ミキ…」
「ん?」
「私ね…私のね…」
泣いちゃった。亡くしてすぐだったから余計に溢れた。
「理沙…」
ミキは人目もはばからず私を抱きしめてくれた。
「泣くな。いや、今なら思い切り泣いていいよ。あたし、軽はずみだった。ごめんなさい」
私の顔は涙でボロボロ。
そんな私をミキは抱きしめ直してくれた。
「今夜さ、あたしん家で家呑みしない?くだらない話してさ」
「私、そんな呑めないよ」
「ではわらわが特製ミルク酒を作ってしんぜよう」
ミキは両こぶしを腰に当てて反り返った。
それを見て私は思わず表情が緩む。
4歳年下で同僚、誕生日が1日違い。でも今はそんなミキがとっても頼もしく感じる。
「ミキ、そんな呑めるの?」
「大学時代のひとつ年上の先輩が酒豪でね(笑)あたし、普段は呑まないけど何かあった時は呑むよ。忘れないように忘れる為に」
「忘れないように忘れる…」
「そう。今までとこれからの自分を大切にする為に」
「響いた」
「でも種明かしするとこれ、あたしが言った言葉じゃないんだ」
「ん?名言の主は?」
「優子さんっていう人。さっき言った大学の先輩だよ。まぁ優子さんも誰かから聞いたみたいだけど(笑)」
「そっか…なんかいい話聞いちゃったな」
「あたしの特製ミルク酒で手伝うよ」