REGRET
14
『いらっしゃいませ〜!』
『〇〇HRどーですか〜?』
『こんにちわ〜!』
”ザワザワ...ザワザワ...”
いよいよ文化祭が始まった。自分たちの保護者はもちろんのことながら日曜日ということもあって他校の生徒やOB、近隣の人たちで学校が溢れかえった。1日を通して約1万人近くの人が来るとも言われていた。
「次の方どーぞ〜!」
「凛どーお?」
廊下で受付係をやっていた凛を中から希が顔を覗かせた。
「めっちゃ人たくさんいるだよ〜!」
用意していた椅子は全部使われており、その後ろで待つ人の列ができていた。
「希ー。戻ってきてー。」
「はいよー!じゃあ、凛、がんばって!」
希は持ち場に戻った。
「ごめん菫!」
「ちょっとー。1人じゃ厳しいんだからー。」
「えへっ!」
午前中担当の3人は休む暇もなく働き続けた。
菫は空たちが来るのを待った。

「こんにちわー!」
「あ、どーも。」
最初に来たのは神田だった。
「ねぇ植草さん。今日の放課後体育館行く?」
「えっと...希たちと行く予定だよ。」
「そっか!」
「ん?どうして?」
「や、別に。盛り上ろうね!」
そう言うと神田は次の場所へ行ってしまった。
「希、体育館で何するの?」
「体育館では生徒たちの中の立候補者が自分の特技などを披露するらしいよ。最後にはLIVEもやるらしくて、LIVEでは会場全体が盛り上がるらしくて、中にはLIVEの盛り上りをきっかけにカップルができることも多いらしいよー!」
「そうなんだ。楽しみだね。」
「うん!」

「うーす!」
そんな話をしていたら拓海と空が来た。
「ねぇ、まだ2人も来てないっしょ〜?」
「あ、午後から行くよー!」
「じゃあ、待ってるからね〜!」
「うん!」
「あっ、そーだ!今日3人で体育館行くんだって〜?」
「あ、そうそう!拓海くんたちも来る?」
「おーまじ〜?行く行く!」
5人で体育館に行く約束をした。
「じゃあ、また後で〜!」
2人は次の場所へ行こうとした時空は立ち止まった。
「2人とも髪型変わってるね!」
「うん。三つ編みにしてみたの。」
菫は空に気づいてもらって上機嫌だった。
「空くんたちもいつもと違うね!」
「おー気づいた?」
「そりゃ、いつもより少しチャラくなった感じかな?」
「あー本当?まぁ文化祭だしね!」
今日の2人の髪型はいつもしていないワックスなどで固めてあった。
「それもいいと思うよ?」
「え?本当?うれしいな!」
空は菫に褒められて上機嫌になった。
「じゃあ、また後で!」
「うん。ばいばーい。」
空は拓海を追いかけた。

12時が過ぎた。3人は午前中のシフトを終えて午後は自由時間。
とりあえず3人は外でやっいる屋台で昼食を取ることにした。何を食べようか迷うぐらいの数があった。
「みんな何食べるー?」
「えーと...迷うね。」
「だよねー。凛は?」
「...。」
「あれ?凛は??」
「え?ここに...いない。」
さっきまで横にいた凛がいなくなった。2人は周りを見回した。
「2人ともこっちこっち〜!」
2人は凛が呼び方を見た。
「世、界、1、お、い、し、い、メ、ロ、ン、パンー_ー」
凛の並んでいた屋台はメロンパンが売っていた。
凛はメロンパンを買って来た。凛はメロンパンを3つに割ると菫と希にあげた。
『ありがとう。』
「では世界一のメロンパンをいただきま〜す!」
凛はメロンパンをかじった。笑顔が消え、気難しそうな顔に変わっていった。
菫と希もメロンパンを食べた。
「これ世界一じゃないよ...。これは世界で325位ぐらいだよ...。」
「って、凛ちゃん今までに325種類も食べてきたの?」
「いや〜実にそうだとも〜!」
「すごい。」
感心し続ける菫にここでもう嘘だとは言い出せなかった。
その後3人はクレープやポップコーンなどをたくさん食べた。
お腹いっぱいになった3人はHR展を周ることにした。

「どこ行く〜?」
「まぁ、とりあえず2人のところに行ってみよ!」
「そうだね〜!」
えっ...。最初から3組...。行くとは言ったもののやっぱり怖い...。でも今頃嫌だとは言えない...。
菫はそう思いながら足がガクガクし始めた。
「さぁ、どーぞどーぞ〜!」
13HRのお化け屋敷はなかなか混んでいた。
”きゃー!怖かったね〜”
出てくる人たちのほとんどがその言葉を口にしていた。
菫の体も凍りつきそうだった。
どんどん順番が近づいてくる。
「楽しみだね〜!」
「うん!」
この2人は楽しそうでいいなぁ...。
「次の方どーぞ!あっ!待ってました〜!」
受付をやっていたのは拓海だった。
「どーぞどーぞ!」
2人はルンルン♪しながら入っていった。菫も恐る恐る入ろうとした。
「ちょっとストップ〜!」
「え?」
菫だけストップがかかった。
「ごめんな〜!これ最高でも2人ずつなんだよ〜!」
「え?私...1人...?」
「そういうことになりますなぁ〜!」
「え...だめ...やだよ...。」
私はその場でもう泣きだしそうだった。
「っと思ってね!おい空出番だぞ〜!」
「うーす!」
教室の中でスタンバイしていた空が出てきた。
「菫さん行こう!」
「あ、よろしくお願いします。」
どうしてだろう。空くんに言われるとなんか安心しちゃう。

いざ暗闇の中に飛び込んだ。周りが全く見えない。
”ワッ”
「きゃっ>_<」
私は唐突に空の腕に抱きついてしまった。
「あ、ごめん。」
菫は空からすぐに離れた。そして再び歩き始めた。
菫は足だけではなく体じゅうがガタガタした。
「きゃ...。」
頭の上に霧みたいなのがかかった。菫は足のガタガタに耐えきれずその場に座り込んだ。菫はすでに半泣き状態だった。
「菫さん!」
菫はかすかに手を差し伸べる空の姿が見えた。
「後ちょっとだよ!立って!」
菫は空の手をつかんだ。空は菫を立たせた。そしてそのまま歩き始めた。
「空くん?」
空は手をつないだまま離さなかった。
「大丈夫。このまま行こ!」
私はは空くんの温かい手に安心感を覚えた。今、空くんはどういう表情をしているのだろう。
「きゃっ。」
その後も怖い場所はあったけど、なんとなくいつもとは違った。今、私の右手は安心感で包まれているから。
そしてだんだん出口の明かりが見えた。ゴールした。出口には先に行った希と凛の姿があった。
「お疲れ菫!がんばったじゃん!」
「うん...。」
希は菫に温かい褒め言葉を投げかけた。
「空〜!どさくさに紛れて〜!」
「あ、ごめん菫さん。」
空はあわてて菫の手を離した。
「ありがとう空くん。」
「ん?よくがんばったじゃん!」
空くんがいなかったからここまでこれなかった。
2人で笑顔で見つめ合う姿を4組からちょうど出てきた神田が見つめた。

”3時になりました。一般公開は終了とさせていただきます。放課後4時にて体育館で昼夜際を行います。自由参加になりますので来たい生徒は是非来てください”
放送が入ると生徒たちは次々に体育館へ移動した。
「希ちゃ〜ん!菫ちゃ〜ん!行くよ〜!」
3人は体育館へと向かった。
「あー、拓海〜!あれ?空は?」
「あー、あいつ何か買わなきゃって言って購買行ったぜ〜!」
「そーなんだ〜!ゆっくり行ってればいいら〜!」
4人は体育館へと向かった。
「あ、私財布忘れちゃった。取りに行って来るね。」
菫は急いで財布を取りに戻った。
「あ、空〜!」
「ねぇ、菫さんは?」
「あー、教室に財布取りに行った〜!」
「わかった!ありがとう。」
空は片手にピーチティーを持ったまま菫の元へと走った。
菫は教室に着くとバックの奥の方に入れてあった財布を取り出した。
「あぁ...。」
財布と一緒に中の物が飛び出した。急いで拾って中に戻した。
入り口の方に滑っていった空くんにあげる予定だったお守りを拾おうとした時だった。
先に拾われた。
「あ...。」
菫は頭をあげた。そこにお守りを見つめて立っていたのは神田だった。
「神田くん...。」
「ねぇ、植草さん...。」
神田の顔が険しく変わった。
「植草さんってやっぱ空のこと好きでしょ?」
「え?」
菫はすぐに違うとは言えなかった。
「いろいろ見てきたけどさ、空といる時の菫さん楽しそうだもん。」
「...。」
菫は何も言い返すことができなかった。
空はその時ちょうど6組に着き、入ろうとした。しかし空はあわてて隠れ、廊下の壁に寄りかかった。
「でも...。空くんには凛ちゃんがいるから...。」
「そんなのは言い訳だよ。心のどこかに空がいるはずだよ。」
「...。」
菫は追い込まれた。
「でしょ?」
追い込まれ続ける菫は力を振り絞った。
「違う...。空くんは1人の友達で...だったらどうしたらいいの!」
神田はその瞬間に菫を包み込んだ。
「え...?」
「だったら俺と付き合ってよ。」
菫は戸惑った。
「え?あ...。」
空はピーチティーをその場に落として6組から離れていった。
「空のことを忘れるためではないよ。俺がだだ植草さんが好きなだけ。俺なら植草さんを幸せにしてみせるよ。」
「幸せ...。」
「うん!絶対。」
「...。」
菫は何も言えなくなった。
「また返事は待ってるから。」
神田は菫を離して出て行った。神田は菫が空にあげるはずだったお守りをポケットにしまった。
菫はその場に座り込んだ。
体育館では昼夜際が始まっていた。
「菫たち遅いね!」
「確かに遅いよね〜!」
希と凛は周りを見回した。
「2人とも分かってないなぁ〜!あの2人は来なくてもいいんだよ!」
2人は拓海の言ってることを理解した。
「そうだよね!」
「あれだな!クリスマスは3人で過ごそうぜ!凛の家で〜!」
「ってなんで私の家なの〜?」
「いいじゃん〜いいじゃん〜!」
「まぁ、いいけども...。」
3人はクリスマスの予定をたてた。2人は抜きで...。

空は体育館へは行かずそのまま家に帰った。
菫はただただ呆然としていた。
その時廊下の窓から降り注いだ風で空の落として行ったピーチティーが転がった。
菫はそれが目に入った。
あれって...。
空くん?
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