REGRET
18
”ピンポーン”
「空〜?お客さんよ〜!」
空は玄関へ向かった。
「あ...。」
「お、よう...。」
神田だった。2人は空の部屋に入った。少しの間重苦しい空気が漂った。
「空の家...久しぶりだな。」
「そうだな。」
先に話し始めたのは神田だった。
「今日はどうしたんだ?」
「俺、植草さんに降られたよ...。」
空はテーブルの上のお茶を取ろうとしたところで一瞬止まった。
「で、報告か?」
「や、お礼を言いに来た。」
「は?」
神田はお茶を一口飲んだ後、話した。
「俺、空に言われて気がついたんだ。俺って覚悟がなかったんだって。あるつもりだった。でもお前には勝てなかったよ。」
「で、何で俺に言ってくるんだ?」
「それは...こないだ植草さんがなー

”『神田くん聞いて欲しいことがあるの。』
『どうしたの?』
『私あれからいろいろ考えた。何度も何度も...。でも答えは1つだった。私は空くんを諦めようとした...でも無理だった。空くんと会わなくても私の心のどこかにはいつもいた。だから...ごめんなさい。神田くんとは付き合えません。』
『うん...。知ってたよ!』
『え?』
『俺は最初は変わりかけていた空を戻したくて植草さんに話しかけた。でも植草さんは俺のことなんて振り向きもせず、ずっと空の方を見ていた。いつの日かそれがうらやましくなってくて、これは好きってことかなって思った。だから告白したんだ。でも告白の返事をもらう今日まで辛かった。』
『え。ごめんなさい。』
『菫さん見るといつも空を探している。いつも空のことを考えている。だから俺にくる答えなんて分かっていたよ。』
『神田くん...。』
『今の菫さんなら空を戻すことはないよ!だから思い伝えろよ!』
『うん。』”

って言ってた。」
空は立ち上がり窓から外を覗かせた。
「それで?俺に菫さんのところに行けってこと?」
「あぁ。お前だって伝えることあるんじゃねーのか?」
空は動揺した。
「俺は...。」
「残念だよ。俺はお前に覚悟ってものを教えてもらったつもりだった。でもお前もそんなもんの覚悟だってことか...。」
「...。」
空は言葉を失い外の暗い景色を眺め続けた。神田はそんな空を見てため息をついた。
「空、こないだ優勝できたのって何でだ?」
「え?何で急に。」
空の頭の中には菫が出てきた。
「これのおかげなんじゃないかな?」
神田は菫が空に渡すはずだったおまもりを出した。空はおまもりを手に取った。
「これ...は?」
「植草さんがお前に作ったやつだよ。」
「何でお前が持ってるんだよ。」
「怖かったんだ。お前におまもり渡したら前の空に戻るんじゃないかって...。」
「神田、お前...。菫さんに言ったのか?」
「あぁ...。あんな空もう見たくなかった。」
「余計なこと言いやがって...。」
「でも、今の空なら大丈夫そうだな!」
「は?」
「今は、植草さんに夢中だろ?俺もそうだった。俺は降られたけど、自分の気持ち伝えることはできた。後悔はもうないよ!」
空は立ったまま心を落ち着かせた。決意した。
空は上着も着ずに家を飛び出した。そして空は全力で菫の元に向かった。
「はぁ...。また負けたか...。」
神田は窓から無我夢中で走る空の姿を見てつぶやいた。

菫と空はお互いを求めて走り続けた。
菫は交差点に来た。信号は赤だった。菫はまだか、まだかと待ち続けた。乗用車側の信号が赤になると同時に飛び出した。
「危ないすみれ(菫)」
後ろから菫は包み込まれた。
「え...?」
そこにいたのは空だった。
「空...くん?」
空はあわてて菫を離した。
「ごめん...。」
「ここって...。」
「うん。すみれが事故したところ。」
「え?」菫は自分を疑った。
「ごめん。俺の前の彼女の名前も植草すみれっていうんだ。菫さんと字は違うんだけどね。」
「そうなの?」
「最初菫さんと会った時は、生まれ変わり...?とか思っちゃったりしてさ...。」
「空くん...。」
空は涙を堪えた。
「そろそろみんなのとこ行こっか!」
空はみんなのところへ向かおうとした。
「待って。」
「ん?」
菫は空の手をつかんだ。
「お墓に行こ。すみれさんのところに...。」
「え?なんで?」
「いいから、いいから。」
「待って!」
空は菫の手を振り切った。
「行けないよ...。今の俺には行く資格なんてないよ...。」
空は自分自身を責めた。
「大丈夫だよ!私もついて行くから。」
空は菫の言葉に心が揺らいだ。
「行こっ!」
菫が空に手を差し伸べた。空は菫の笑顔に負け、手を取った。2人はそのまま手をつなぎ、お墓に向かった。

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