REGRET
4
高校生活が始まってもう3週間が過ぎ去った。だいぶ高校生に慣れてきた。そして今日は部活動の本入部願いの提出日であった。菫と希はテニス部に入ることにした。凛は何か悩んでいる
ようでった。
「凛ちゃんは何部入るの?」
「私はね、中学の時陸上部だったからそのまま陸上部にするか、それともサッカー部のマネージャーやるか迷っているの〜!」
「マネージャー?それはすごいね。」
私には考えられないことをしようとしている凛ちゃんがかっこよく見れた。
「凛、ちょっといいか?」
廊下から誰かが呼んでいるようだった。
あっ、あの人は...。
私を助けてくれた男子生徒だった。凛は廊下に行った。私は最近よくあの男子生徒を見る気がした。登校の時も玄関で見るし、移動教室の時も、購買へ行くときも。
「菫?」
「.....」
「おーい、菫さーん??」
私ははっと我にかえると、隣で希が呼んでいた。
「あ、どーした希?」
「もー、ぼーっとしすぎだってーの!」
私は自分の世界に入りすぎていて、希が呼んだのに気ずかなかった。
「ごめんごめん。」
「さっきの男子ってもしかして?」
希は菫の仕草だけで気ずいていた。
「え?どうして分かったの?」
「見てれば分かるよー!実は好きなんじゃないのー?」
え?好き?どうして?私は全く状況がつかめなかった。
「だって、さっきの人、凛ちゃんの彼氏なんだよ?」
私は思わず声が大きくなってしまった。
「え?そーなの?まあ任して!」
「任せるってなにを?」
その時凛が帰ってきた。
「私ね、マネージャーやるの〜!!!」
凛は自信満々だった。
「凛!いい決断だと思うよ!」
「ありがとう〜!でもどうしてそー思うの〜?」
希は笑顔でうなずいているだけだった。私はさっきから希の態度がいつもと違うように感じた。
今日の昼休みは3人で購買へ行く約束をしていと。
「菫ちゃ〜ん!今日は何を買ったの〜!」
「今日はクリームパンだよ。凛ちゃんは?」
「メロンパンだよ〜!」
毎回メロンパンを買っている気がした。
「またぁ?」
「いいじゃないのよ〜!メロンパンは一番おいしいの〜!そういう希ちゃんは〜?」
「私はサンドウィッチだよ!」
「ど〜れ?意外とおいしそうじゃんか〜!まっメロンパンの次に!」
凛は大のメロンパン好きだった。
私たちは盛り上がっていると、向こうのほうで私を助けてくれた凛ちゃんの彼氏がきた。何を買うのか少し気になって見ていたら、その男子生徒は私の視線に気づいてしまった。目があった。
「菫、行くよー!」
希にそう言われると、一目散に向かっていた時だった。私は何者かに腕をつかまれた。
「ねえ、ちょっと待って。」
私は振り向くと、そこに立っていたのは凛ちゃんの彼氏であり、私の助けてくれた人だった。
「俺の名前は吉田空。君の名前は?」
私は焦りまっくった。
「えっ、え、えっと...植草菫です..。」
その時空の手に力が入った。
「いたっ..」
私は空くんの力の強さに驚いた。男子ってこんなにも力が出るんだ。
「ご、ごめん。」
空が手を離すと、菫は空に一礼をしてからすぐに希たちのところに走って行った。
空は走っていく菫の背中を凝視した。そして菫が見えなくなると自分の手を見つめてから、ぐっと手を握った。
「菫ちゃ〜ん遅かったじゃん〜!何かあった〜?」
私は言うべきかどうか迷った。
「や、なんでもないよ。ただ混んでて、通れなかっただけだよ。」
私は二人に嘘をついてしまった。そのまま教室に行き私たちは昼食を取った。
「メロンパンおいしいよ〜!希ちゃんと菫ちゃんのパンはど〜よ?」
「めっちゃおいしいよー!やっぱサンドウィッチが一番最高だよね!」
「....」
「菫?」
「菫ちゃ〜ん?ツンツン!!」
私はほっぺたをツツかれてやっと気がついた。
「え、あ、なになに?」
「え〜!今めっちゃぼーっとしてたでしょ〜!」
私はまたも聞いていなかったことに気がついた。
「ごめんごめん。」
「も〜!クリームパンがおいしすぎて感動しちゃったの〜?」
「えっ、あ、そうかも。」
私はまた嘘をついてしまった。2人の顔を見てみると、凛ちゃんは呆れた顔をしていた。
希は...
希はもしかしたら私の考えていることが見えているかと思うと、私は焦りを隠せなかった。

5時間目の授業が始まった。しかし今日は全く集中できない。頭の中にすぐに空くんが出てきてしまう。なんでだろう。そう思いながら外を見ていたら体育でサッカーをやっていた。
あっ。空くん。
私は空くんを見つけた。サッカーすごく上手。やっぱり空くんはサッカー部。だから凛ちゃんはマネージャーをやったんだな。いいカップルなんだなぁ...。
「おい、植草次お前だぞ。よそ見するな。」
「あっ、ごめんなさい。」
完全にぼーっとしていて先生に注意されてしまった。

「ねえ、菫。菫ってやっぱり助けてくれた男子のこと好きでしょ?」
「えっ.....」
私は学校の帰り道の夏に向かって若葉の生育している木の横で立ち止まった。
「だって最近よく周りを見ている気がしてさ!」
「や、全然...。全然違うって。」
菫は動揺を隠せなかった。
「菫、私には嘘は無駄だよ!」
「だからさ...」
「すぐに分かるよ。私に相談してよ。自分で抱え込んじゃだめ!」
希の笑顔が真剣な顔に変わった。
「うん..。ごめん。希には、全部ばれちゃってるよね。私ね、空くんに出会った時からよく見かけることが多くなって。最初は見つけるだけだったけど、今は自分から探しに行ちゃってて。希に好きなのかって聞かれた時にも私はわからなかった。好きってラインはどこにあるのか。どこから先が好きなのかって。私は今までに好きな人なんていなかったし、そんな感情わいたこともなかった。なのにどうして?今はなんでだろうって思うの...。」
私は希にこんなことを相談するのは初めてである。
「それが好きってことだよ!菫は空くんに恋してるんだよ!」
「えっ?」
自分が人のために心を使うこと、それが恋なんだよ!」
「私は好きってこと?」
「そういうこと!!」
私の初めて好きになった相手なんだ。でもだめだよ...。だめだよ...。
「だめなんだよ。」
「えっ?どうして?好きなんでしょー?」
「空くんは凛ちゃんの彼氏。だから好きになっちゃだめだよ。」
そう、空くんには彼女がいる。しかも私の友達の凛ちゃんなんだよ。
「でもまだ分からないじゃん!」
もうだめだ。忘れなきゃ。こんな話をしていてはいけないんだ。
「希さ、GW何するの?」
菫は無理やり話を変えた。それでいいんだ。それで...。
「菫?」
菫は無理やり作ったような笑顔で希を見た。希は菫の気持ちを察した。
「GWは全部テニスの練習試合観戦だよー!」
よかった。希が分かってくれて。
「そうだったね。楽しみー。」
そう言いながら、私は歩き始めた。
「んじゃ、明日試合観戦見に行こうね。ばいばい。」
これでいいんだ。
「ばいばーい!」
希は菫の姿を振り返った。菫の背中から何かを訴えかけているような寂しい姿だった。

菫......。








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