REGRET
5
早くも1学期は後1ヶ月である。しかし来週は定期テストが控えていた。
「菫ちゃ〜ん!数学教えてよ〜!」
「菫!私にもー!」
今週になりテスト勉強をやり始めた2人が毎日のように聞いてくるようになった。
「えー。またー?」
「だって菫、赤点になったら夏休みテニスできないんだよ?」
「私だって部活行けなくなっちゃうでしょ〜!」
「わかったよ..。どこなの?」
こういった放課後を過ごす日が多くなってきた。

「あー、もういや〜!」
「凛ちゃんできないとだめだよ。」
「だってこんなグラフ書けたところで将来何ができるって感じじゃん〜!」
「たしかに!凛の言う通り!なんだこりゃー!

「はぁ....。」
2人に教えるのはなかなかの試練である。
「このままだと赤点になっちゃうよ?」
「え〜!赤点は嫌!でもグラフも嫌〜!」
「凛、それは都合がよすぎだぞ!」
「あ〜!希ちゃん私を裏切ったなぁ〜!」
「てへへ!」
これはもう教えようがない。
「そ〜だ!息抜きに購買行かない〜?」
「それ賛成!」
「ちょっ、まだ30分もやってないよ?」
「菫ちゃ〜ん!そんなにせっかちにならないの〜!彼氏できないよ〜!」
「えっ...。」
そう言って2人は行ってしまった。こんなんで大丈夫なのかなぁ...。
仕方なく私もついていくことのした。
「え〜もう缶ジュースないじゃんか〜!」
「まあ、暑くなってきたし、仕方がないじゃないかな?」
結局3人とも紙パックのジュースを買うことにした。

「よ〜し!さぁ、菫先生よろしくお願いします!」
「これはこうやって。」
「ほ〜!なるほど!」
「ちょっと、全然分からないんだけど!」
凛ちゃんが分かっても、まだ希がいた。
「凛ちゃんこっちの問題自分でやってて。」
凛ちゃんよりも希の方がやばいかも..。
「こっちからこうやって書くグラフだよ。」
「ん.....あっ!!分かったかも!」
希は一応分かったらしい。
「菫ちゃ〜ん!全然だめだよ〜!」
菫は凛のノートを覗いた。
あぁ...もうだめだ...正直アホすぎる...。
1時間で1ページペース。単純計算すると全範囲が終わるのに45時間かかる...。しかもテストは数学だけではない。そう考えると私は倒れそうだった。
その時だった。
「凛〜〜〜!数学教えてよ〜!」
「あ〜拓海!」
誰だろう。
「あ、俺もよろしく!」
あっ...。私は一瞬意識が飛びそうだった。
「空もいるじゃん!私今この先生に教わってるから、君らもどう??」
「えっ、ちょ、凛ちゃんなんで..」
私は焦った。忘れかけていた空くんが再び頭の中に蘇った。
「やっぱり俺今日はいいかな。拓海、1人で教えてもらいな。」
そう言って空はそのままどこかへ行ってしまった。
「おい!待てって!あー、行っちまったなぁ〜。ごめんよ!あいつ、あー見えて意外と恥ずかしがりやなんだよね!」
「拓海だけやってく〜?」
「まぢ??いいの??」
「いいよね〜菫ちゃ〜ん!」
「う、うん...。」
さすがにここで嫌だとは言えない。だけど1回も話したことも見たこともない人に教えるのは緊張しすぎる。ずっと教えれるかどうか心配だった。
「菫ちゃんだっけ?よろしくっ!!」
「あ...。よろしくお願いします...。」
話した感じ的に悪い人ではなさそうだ。
「菫ちゃん、菫ちゃん!ここから分かんないんだけど!」
私は拓海くんの指で示しているところを見た。
え?これって。最初の問題の1番の基礎。まさかとは思ったが...。
「拓海こんなのもできないの〜?」
「うるせ〜!俺はバカなんだよ!」
「うん!!それはかなりのバカだね〜!」
凛が拓海をバカにするということはよっぽどだ。
「菫ちゃんよろしく!」
「菫ちゃんは、希ちゃんと勉強しててっ!こんぐらいは私が教えるから〜!」
「え..でも...。」
「いいから、いいから〜!」
私は正直今の凛ちゃんが教えれるかどうか心配だった。まぁ、凛ちゃんがいいならいいはずだが...。と私は希を教える方に回った。
「あれ?希?なんで応用やってるの?」
「なんでだろう?コツが分かったってやつかな?」
希はどんなコツを見つけたんだろう。さっきまでできなかった問題も全部できてるし、応用も初めの方はできている。私も応用終わらせるのになかなか苦労したのに、こんな短時間で...。
「希、ほんとすごいね。」
「そーお?それよりあっち見てた方がいいと思うけど...。」
「凛教えるのは下手くそじゃね?ってかまず答えにたどりついていないじゃないか〜!」
「や、さっきこっちの問題でこうやってやったんだけどなぁ〜!」
「これとこれのやり方ちゃうやんか〜!」
「え〜?でもそんなことないら〜?あれ〜〜?」
菫の予想通りだった。
「菫ちゃ〜ん!さっきこうやってやったのに〜!」
私は見てみたが、さっきやった問題とは全く違うやり方だった。
「凛ちゃん...。これとこれは違うよ?」
結局また最初から2人に教えることになった。

かれこれ2時間ぐらいやった。外はもう夕日が沈むころだった。
「そろそろ帰りますか〜!」
凛ちゃんはもう片付けを始めていた。
「それもそうだな!菫ちゃん今日はありがとう!」
拓海くんはとても明るくて優しい性格の人だった。話しやすかった。
「帰ろっか、希も...。」
って、もうカバンを背負っていた。この人たち片付けるのだけはものすごく早い。
「そういえば拓海、空はどこへ行ったの?」
凛ちゃんちゃんのせいでまた頭の中に空くんがでてきた。
「分かんね〜。でもあいつのことだから教室にいるんじゃね?ちょっと見てくるは〜!」
拓海は空を探しに行った。
「んじゃ、私たちもそろそろ行きますか〜!」
「えっ?あの2人は?」
「拓海と空は3組だから帰り途中だよ〜!」
あの2人は3組だったのだ。
3人は昇降口へ向かった。
「拓海〜!空は〜?」
「あいつね、先帰ちゃったみたい!」
「え〜!いつも拓海と帰ってるのに珍しいね〜!」
「いつもは待ってるはずなのになぁ...。」
「まぁ、じゃあ、4人で帰ろうか〜!」
そして4人は正門を出た。向こうから大きな人影が見えた。
「こ、こんにちは!」
凛と拓海はあわててあいさつをした。
「お前らいいところにいた。部室の掃除してけ。」
「は、はい!」
そう言うといかにも威厳のもった人は行ってしまった。
「はぁ...。今のはビビるは...。」
「まさかキャプテンが来るとは...。」
どうやら先輩らしい。
「2人とも先帰ってて〜!」
そう言うと凛と拓海はダッシュで部室に向かった。
2人がいなくなるといつも通り希と2人になった。もうすっかり暗くなった。
私たちは帰り道にある恐怖のお墓があるところを通っていたときだった。こんな夜に人が出てきた。私の心拍数がどんどん上昇していった。
「あ、空くん。」
恐怖のお墓からでてきたのは空だった。
「あー、菫...さん。ごめんね、驚ろかしちゃって。」
「ちょっ、けっこうビビったよ。」
「意外とビビリだね!」
「えっ...」
初めて空くんが笑った。
「まぁ、気をつけて帰りなね〜。」
空はそのまま家に帰っていった。
空くんが初めて笑ってくれた。諦めたはずなのに。忘れたはずなのに。どうして...。
「あれが空くんって子かー!意外と優しそうじゃん!」
「うん!でしょでしょ!」
私はうれしくて心がうかれていた。
希は菫の心をつかめた。
「菫!行くよ!」
「えっ?どこに?」
希は菫の手を引っ張って今来た道を逆に歩き出した。だんだんと速度が速くなり走り始めた。
「あ、2人ともどーしたの〜?」
希がつれてきたのは凛のところだった。希は息を整えてから、言った。
「凛ってさ、空くんの彼女なの?」
「えっ?希ちょっと...。」
私は希がいきなり聞いたので焦った。
「え〜?違うよ〜!だだ中学が同じだけ〜!」
え?うそ?
まさかの凛ちゃんは彼女ではなかった。
「もしかして、カップルだと思ってたの〜?」
私なんか少しうれしかった。やっぱりこの気持ちが好きってことなのかなぁ。
「菫は、実は空くんが好きなんだよねー!」
「ちょっと希。」
希には聞いてくれたことへの感謝と怒りが混ざり合った。菫の顔は真っ赤である。
「菫ちゃん、あいつのこと好きなんだ!」
拓海と凛はびっくりとした表情だった。
すると凛が真剣な顔になった。
「でもね、菫ちゃん。空は多分...。」
「あ〜〜〜〜!!おめでとう〜!がんばれよ〜菫ちゃ〜ん〜!!」
凛が言いかけていた時に拓海が邪魔をした。
私は1度心を落ち着かせた。そして決めた。
「私、空くんが好きなんです。」
みんなの顔色をうかがうのは恥ずかしい。でも自分の気持ちを伝えれた。

「じゃあ、また明日!」
『ばいばーい!』
菫と希はまっすぐ行き、凛と拓海は左へ曲がった。
「ねえ、菫。」
「ん?」
「菫は前の菫とはもう違うね!」
「え?どういうこと?」
「自分で自分の本当の気持ちを伝えれるようになったじゃん!」
「希。」
「今まで後悔してきたんじゃない?」
「うん...。そうかもね。今日自分の気持ち伝えたとき少し感じた。」
「菫。それでいいんだよ!」
2人はお互い見つめ合って笑った。

「拓海、さっき何で邪魔してきたのさ?」
「そんなん決まってるだろ。」
「だって、空がどういう気持ちになるか分かる?」
「じゃあ、あそこの場で言ったら、菫ちゃんどう思う?菫ちゃんは相当悩んで決めた覚悟なんだぞ!」
拓海は少し怒り口調で言った。
「でもそれは後から気付くのだって同じ。や、むしろ今の方がいいんじゃないかな!」
拓海につられて凛も怒り口調になった。
「でもさ、そんなこと俺らが決めるもんじゃねーしさ。全部空自信が決めることだからさ!」
拓海は心を落ちかせて話。
「...。」
凛は何も言い返すことができなかった。
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