キミに恋の残業を命ずる
そういえば、
「ここまで許したのはキミが初めてだよ」
って言ってたな。
意外にわたしが思っているよりガードが固い人なのかもしれない。
女慣れしてそうだれど、実は。
…って。
じゃあもしかして、今のわたしの状況って、すごく特別なこと、なのかな…。
「亜海」
急に浴室の外から呼ばれてびくりとなった。
「バスタオルここに置いておくから。終わったら洗濯機の中に入れておいて」
「あ、はいありがとうございます」
…びっくりした。
そう言えば、わたし名前で呼ばれてるんだった…。
課長がそこまでわたしの料理を気に入ってくれたのがおどろきだけれど…そうとなれば、こっちももう少し課長のことを信用してもいいのかな。
この関係も不安に思うほど厄介なものではないかもしれない。
バスルームの扉をそっと開けた。
うん、課長はもういない…。
洗面所の横にバスタオルが置いてあった。
取った拍子にキラリとなにかが落ちた。
ネックレスだ。いけない、ここに置いたのを忘れていた。
とネックレスを拾おうとしたところで、わたしの目に入ったものがあった。