キミに恋の残業を命ずる
「そもそも最初に出会ってしまった時点で手遅れだったと思わない?こうなるのはきっと、運命だったんだ」


かつり、と課長が近づいてきた。

その顔からは、いつの間にか笑みが消えていた。
射抜くような真剣な眼差しを向けられて、わたしは知らず後ずさる…。


「いいだろう。こういうことは最初が肝心だ。もう一度業務内容と雇用条件を確認しておこうか」

「……」

「キミは俺につくし、俺の要望に応え、俺と一緒に過ごす」


もちろん、身体の関係は免じてあげるけど。

と、ぞくりとする低い声で付け足されて鳥肌が立った。


「そしてその代償に、俺はキミを全力で助け、守り、支える」


圧倒されながらも、わたしの胸は高鳴っていた。

有無を言わせないその態度と強い口調に、甘い眩暈を覚えていた。
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