キミに恋の残業を命ずる
「そうそう。ちなみにこの命令を拒否できる方法が、ひとつだけあったよ」

「なんですか…」

「それは、ある事情が生じた場合。そうなれば『命令』は自然消滅することになる」

「事情?」


くす、と課長は口端を上げた。


「それは『キミが俺を好きになった場合』」


な…。


「俺のことを好きになって自らの意志で俺に尽くしたい思ったら、もうこの命令は命令じゃなくなる」

「そ、それは絶対にありません…!」


悲鳴に近い声でわたしは遮った。


「わたしが課長を好きになるなんて絶対にありません」

「絶対?」

「絶対です…!」



だって…

課長みたいな人に、わたしがつりあうわけない…。



「はっきり言うね」


とん、と背中に冷たい感触を感じた。
いつのまにか、反対側の壁に追い込まれていた。
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