キミに恋の残業を命ずる


『だぁーいじょぶだってー。昨日だってあんなにやっかいな仕事ひとりでやっつけたじゃなーい?』



…先輩サマ、なにをご冗談を。


昨日のは『まさかの奇跡』ってやつなんですよ…。



実は、昨日もわたしは似たような成り行きで残業に追い詰められていた。


管理している親交会の帳簿残高が合っていないために、百人近い社員や臨時職員の出欠状況と複雑な会費金額をいちから確認するという作業。

けど、実務的にエクセルを使いこなせないから全然進まないし、寒いし、疲れたし、お腹は空いたし、で集中力がカツカツになってきて…。

なのに『明日までに必ず合わせなさい』と強く言われていたから…もうどうしていいのかわからなくて追い詰められちゃって―――。

ついには涙が込み上げてきた…。


決壊してしまえば最後。

この数か月、耐えに耐えてぼろぼろになった心は、あっけなく崩れ落ちてしまった。


泣いて泣きじゃくって泣き疲れて…。

挙句には子供みたいにウトウトしてきたそんな時―――





あの夢を見た。
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