キミに恋の残業を命ずる
部長が営業部のオフィスへと入って行くのを見送りながら、ふたりのやり取りを思い起こした。
腐れ縁、かぁ。
その通りって感じのふたりのやりとりだったな。
課長はいつも以上にくだけた笑顔だったし、部長も鉄仮面な普段では絶対に見せない表情を浮かべていた。
部長はシステムソリューション部門の企画営業。
課長はそのソフトウェア開発を担うプログラマー。
切っても切れない関係。
ふたりの連携が社の躍進の原動力になっているのは誰もが認めることだった。
そんな中にわたしが入るなんて、恐れ多いなぁ。
そうこうしているうちに、もう他の社員が出社して来てもおかしくない時間になっていた。
「じゃ、わたしはこれで」
留まっていたエレベーターに乗り込もうとした。
すると課長が手を取って、わたしを引き戻した。
「待って亜海。さっきの続きがまだだよ」
そして不意打ちに、頬にキスをおとされた。
「じゃ、今夜から待ってるからね」
でも、わたしはもう後戻りできない状況に入りこんでしまったのだった。