キミに恋の残業を命ずる
「そういえば、昨日お願いしたの持って来てくれた?」

「はいはい。ご命令に従い作ってまいりましたよ」


とわたしは持って来ていた紙袋からタッパーをだした。


今日は課長のご要望により我が家の定番お菓子、バナナマフィンを作ってきた。

生地にペースト状にしたバナナを混ぜた、ほんのりやさしい味がたまらない大好きなお菓子だった。


トースターであたためれば、ふんわりと甘い香りがただよってくる。

表面がカリッとし始めたところで、小皿に乗せた。


「ん、美味しそう。いただきま」

「あ!待ってください!」

「ん?」

「これを忘れちゃだめですよ」


わたしは冷蔵庫で冷やしていたクリームをスプーン一杯にすくってマフィンの横に添えた。


「おいしいですよ!ほっぺたが落ちてしまいます」


課長は心なしか恐る恐る口にふくんだ。


わたしも大きくぺろり。

うん、美味しい!
ひさしぶりに作ったけど、やっぱり絶品だ。


課長の感想はどうかな?
と見やると、課長の噛む動きは鈍かった。
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